植物毒素(読み)しょくぶつどくそ(その他表記)phytotoxin

改訂新版 世界大百科事典 「植物毒素」の意味・わかりやすい解説

植物毒素 (しょくぶつどくそ)
phytotoxin

植物の病原体が分泌する代謝産物のうち,低濃度で植物に有害な作用を示す物質で酵素以外のものを毒素といい,このうち宿主植物に対してのみ特異的に作用するものを病原毒素pathotoxin,宿主以外の植物にも作用するものを植物毒素という。病原毒素は寄主特異的毒素ともいい,毒素が作用する植物は病原体の宿主に限られている。たとえばナシ黒斑病菌の病原毒素は,この菌に対して感受性品種の二十世紀では低濃度で壊死(えし)斑を形成するが,抵抗性品種の長十郎には作用しない。このように病原性と毒素の働きが一致していることから,病原毒素は病原菌の病原力に直接関与していると考えられる。一方植物毒素は,病原体の宿主特異性とは関係なく作用するので,非特異的毒素ともいう。たとえば,トマト萎凋(いちよう)病菌の生産するフザリン酸の液に各種植物を浸すと,宿主・非宿主の区別なく萎凋症状が現れる。植物毒素はイネいもち病菌などの糸状菌のほかに,タバコ野火病菌やインゲンマメかさ(暈)枯病菌などの細菌からも分離され,その化学構造も判明している。一般的な植物毒素の作用は,宿主細胞の細胞膜透過性を変化させたり,宿主細胞の呼吸代謝を狂わせて正常な調整機能を失わさせると考えられている。植物毒素は宿主の病徴発現になんらかの形で関与していると考えられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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