楯無堰(読み)たてなしせぎ

日本歴史地名大系 「楯無堰」の解説

楯無堰
たてなしせぎ

かやヶ岳南西麓一帯を灌漑する用水路。上野山うえのやま(現韮崎市)立石たていし原の広い原野を灌漑して美田としたので立石堰とよんだのが転訛して楯無堰となった。現在は延長約一七キロ、灌漑面積二九八ヘクタールに及ぶ。「甲斐国志」に「寛文丙午年江戸ノ人野村宗貞始テ開ク故ニ宗貞渠トモ云フ、然レドモ漏水多クシテ下流ノ田ニ漑ギ難キ故、其翌未申両年ニ有司今ノ渠道ヲ通ズト云、発源ハ逸見筋小笠原ニ在リ塩川ノ水ヲ引ク」とある。この地域は古代の甲斐三官牧のうち最大の穂坂ほさか牧があった所で、火山裾野の干害地域で、住民は灌漑用水はおろか飲料水にさえ不自由していた。寛文(一六六一―七三)初め宇津谷うつのや(現双葉町)に隠居していた江戸の浪人野村宗貞は堰の開削を願出、許されて寛文六年に着手した。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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