日本大百科全書(ニッポニカ) 「樹脂安定剤」の意味・わかりやすい解説
樹脂安定剤
じゅしあんていざい
resin stabilizer
プラスチックなどの劣化を防止あるいは抑制するために添加される化学薬品のこと。プラスチックなどは熱、光や酸素の影響を受けて、そのときの環境条件によって遅速はあるが劣化していく。この劣化のようすもその原因やプラスチックの種類によって異なるので簡単ではない。プラスチックを加熱して成形していく際の熱劣化、成形物を長時間使用している間におこる光や酸素による光劣化や酸化劣化などを防止あるいは抑制するために用いられる。代表的なものに熱安定剤、酸化防止剤および光安定剤などがあり、ポリ塩化ビニル用の熱安定剤の種類がもっとも多い。ポリ塩化ビニルは加熱や光によって塩酸が脱離し、褐色に色づいてくるので、これを防止ないし抑制するために安定剤が用いられる。
一方、重合しうる化合物(単量体)は、その貯蔵安定性を保つためにハイドロキノンやカテコールのような重合禁止剤を単量体に加えておくことがある。このような重合禁止する作用をもつ薬剤をも安定剤とよぶことがある。このように安定剤という用語は、その内容がいろいろと複雑で多方面にわたっている。とくにその作用の機構は複雑である。
[垣内 弘]