材料は,熱,光,放射線,機械的摩擦,反復使用,化学薬品,微生物などの影響を受けて,変色したり,機械的強度が低下したり,亀裂を生じたり,軟化したり,もろくなったりして,ついには実用に耐えなくなることがある。このような現象を一般に劣化または老化という。劣化は,材料を構成している原子の集合体,分子およびその集合体の構造が変化し破壊されることによるもので,金属材料,無機材料,有機材料のいずれにおいても起こるが,化学反応性に比較的富む有機材料ではとくに多様な要因が複合的に働いて劣化が起こる。たとえば有機高分子材料を空気中太陽光のもとで使用する場合には,それを構成する鎖状の高分子が,末端から,また途中から切断したり,酸素との反応で一部に酸化生成物ができたりする。またポリ塩化ビニルのように脱塩酸が起こって二重結合ができて着色したり,高分子の間に結合が起こってもろくなることもある。
執筆者:井上 祥平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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