歴史批評辞典(読み)れきしひひょうじてん(その他表記)Dictionnaire historique et critique

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歴史批評辞典」の意味・わかりやすい解説

歴史批評辞典
れきしひひょうじてん
Dictionnaire historique et critique

フランスの哲学者ピエール・ベールの著した百科全書的事典。1697年オランダのロッテルダムで 2巻本として出版され,その後増補が重ねられた。各項目の記述は史的と批判的の 2部に分かれ,まず見出し語概念についての事実が簡略に記され,次に多くの引用を用いつつ長い注解が展開される。そこでは特に誤謬に対する批判,哲学的反省が大きな部分を占める。著者の碩学ぶりと相まって,いきいきとした精神で記述されており,その合理主義的宗教観を含めてドゥニ・ディドロ,ジャン・ダランベールの『百科全書』Encyclopédie ou Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiersのさきがけとされる。著者は教皇,王,教父,皇帝,聖書中の人物などの名を意図的に排除したので,重要な項目が欠けているのが欠点

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世界大百科事典(旧版)内の歴史批評辞典の言及

【百科事典】より

…後者はConversationslexikon(字義どおりには会話辞典)と題するタイプの最初のものであり,台頭する市民階級の世間的つきあいに必要な教養を提供する目的で編まれており,この系統は後の《ブロックハウス百科事典》などにつながっていく。さらに,この時期の代表例としては,フランスのP.ベールの《歴史批評辞典Dictionnaire historique et critique》2巻(1697)があげられる。理性的判断への信頼を強調するベールは,個々の知見の真偽を〈批判的〉に吟味しようとしたのである。…

【ベール】より

ナントの王令廃止直後の86年には《〈強いて入らしめよ〉というイエス・キリストの言葉の哲学的注解》を書いて,フランスにおける新教徒迫害にたいし良心の自由と宗教的寛容を訴え,ロックとともに寛容思想の先駆者となったが,このころからスダン以来の同僚で亡命フランス人の指導者であったジュリウーと,とくに寛容の問題をめぐって対立し,激しい論争の末93年にはついに教職を追われるに至った。 その後は大作《歴史批評辞典》に専念し,これは97年に刊行されたが,その後も多くの版を重ね,18世紀に広く読まれた。このベールの代表作は驚くべき博識と鋭い批判精神で,モレリの《歴史大辞典》をはじめとする従来の歴史辞典の不正確と偏向を正した〈誤謬の辞典〉であるとともに,また既成のあらゆる哲学体系を徹底的に批判し,理性によって絶対的真理に到達することの不可能性を例証する形而上学破壊の書であった。…

※「歴史批評辞典」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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