ロッテルダム(読み)ろってるだむ(英語表記)Rotterdam

翻訳|Rotterdam

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロッテルダム」の意味・わかりやすい解説

ロッテルダム
ろってるだむ
Rotterdam

オランダ南西部、ゾイト・ホラント州にある国際的な港湾・商工業都市。地名は市の北部を流れるロッテ川のダム(堰堤(えんてい))に由来する。人口は59万5255(2001)で首都アムステルダムに次ぎ、都市圏人口は98万9956(2000)。ライン川、マース川の分流である新マース川の南北両岸にまたがって市街は形成され、北海河口から約30キロメートル上流に位置する。19世紀後半に北海との間に「新水路」Nieuwe Waterwegが開削されてから外洋船の遡航(そこう)が可能となり、港湾は急速に成長した。ライン川、マース川水系の内陸水路を通じてドイツのルール工業地帯やベルギー、フランス、スイスと結ばれ、広大な後背地を有する中継港、積換え港として重要で、コンテナ基地があるほか、パイプラインがアムステルダム、ケルンフリュイ(ベルギー)の諸都市へ延びている。とくに1958年より外港として建設されたユーロポートEuropoortは、ヨーロッパ共同体の玄関として発展し、このためロッテルダム港は65年にニューヨークを抜いて世界最大の貿易港へと躍進した。現在もEU(ヨーロッパ連合)の門戸として中継貿易が盛んである。工業も活発で、従来の造船、食品(ココア、コーヒー、たばこ)に加え、新マース川南岸やユーロポートには巨大な石油化学コンビナートが展開している。

 市街中心部は、1940年のドイツ軍の爆撃で完全に破壊されたため歴史的建造物に乏しいが、15世紀の聖ローレンス教会や、オランダ絵画の収集で有名なボイマンス博物館などが残っている。第二次世界大戦後は中心部の再開発が行われ、区画整理によって住宅数は戦前の約4分の1(6000戸)に減少したほか、歩行者天国の大ショッピングセンターであるラインバーンや、ドゥーレン会議場、中央駅などが建設された。新マース川河畔には高さ117メートルのユーロマストがそびえ、南北両岸地区は道路トンネル、地下鉄で結ばれる。人文学者エラスムスの生地で、商科大学を核に1973年総合化されたエラスムス大学がある。

[長谷川孝治]

歴史

13世紀にダムが築かれ、1340年にはホラント伯が自治権を与え、また運河建設を認可した。1488年ブレーデローデ伯が占領、周辺村落を奪った。1563年には市の大半が焼け、72年にはスペイン軍の略奪を受けた。その後、ロッテ川の河床に堆積(たいせき)した泥を掘って港を整備し、その泥を盛り土として河岸をつくったが、これは後世の発展の基礎となった。オランダ独立戦争(1568~1648)後の17世紀には、フランス、イギリスとの取引の中心港として繁栄し、アメリカ、インドシナにまで船を送った。1685年のナントの王令廃止で、フランスのユグノー(新教徒)が多数この地に亡命した。ナポレオン1世時代の停滞期が過ぎて19世紀後半には、ラインラントやルール地方の産業化に伴い、また「新水路」の建設により、大貿易港となった。

[磯見辰典]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロッテルダム」の意味・わかりやすい解説

ロッテルダム
Rotterdam

オランダ南西部,ゾイトホラント州の都市。同国第2の都市。ロッテ川の河口に堤防を築いて干拓した土地に,13世紀に建設された集落が起源。その後マース川の湾曲点を中心に発達し,1328年に自治都市となった。アントウェルペンが衰えた 16世紀末から発展を始め,18世紀以後圧倒的な勢力をもつようになった。特に 1866~72年北海に通じる新水路が完成してからは,貿易港として急速に発達,ドイツのルール地方の工業化進展に伴って,貿易量も急激に増大した。第2次世界大戦ではドイツ空軍により市街の大部分を破壊されたが,戦後ただちに復興。港の修復も 1949年までに完了し,さらに 1958年にはマース河口に,外港,石油基地としてのユーロポールトも建設され,世界でも有数の貿易港に発展。また,マース川とニーウェワーテルウェフ(新水路)運河に沿ってスヒーダムからフラールディンゲンまで連続した一大工業地帯の中心として,製油,化学,造船,機械など各種の工業も盛んである。市はまた,文教の中心でもあり,ルーベンス,ファン・アイクなどの収集で知られるボイマンス=ファン・ボイニンヘン美術館をはじめ,多くの美術館,博物館と,社会科学,医学,美術など各種の教育機関がある。港には 185mの展望台ユーロマストが建ち,南東 15kmには風車の村キンデルダイク Kinderdijkがある。人口 58万4058,大都市圏 98万5950(2007推計)。

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