改訂新版 世界大百科事典 「殺線虫剤」の意味・わかりやすい解説
殺線虫剤 (さつせんちゅうざい)
nematocide
センチュウは植物に寄生するものも多く,農業上重要な有害生物である。これを防除する薬剤を殺線虫剤という。農業上最も大きな被害をひきおこしているセンチュウは寄生性のネコブセンチュウで,ネグサレセンチュウがこれにつぐといわれている。殺線虫剤には植物に寄生しているセンチュウを殺すものと土壌中のセンチュウを殺すものとがあるが,大部分が後者のものである。主要な殺線虫剤は次の通りである。(1)ハロゲン化炭化水素系 クロロピクリン,臭化メチル,D-D,DCPI。(2)チオシアネート系 メチルイソチオシアネート,REE。(3)ジチオカーバメート系 カーバム,ダゾメット。(4)有機リン酸エステル系 メスルフェンホス,ピラクロホス,エトプロホス,ホスチアゼート。(5)その他の合成殺線虫剤 酒石酸モランテル,塩酸レバミゾール,ベノミル。またある種の植物成分が殺線虫作用を有することも明らかにされている。例えば,マリゴールドの根から単離されたゴールデンネマトーダに有効なターチエニルや,アスパラガスから植物生長阻害物質として単離され,のちに殺線虫活性が見いだされたアスパラガス酸などが知られている。
執筆者:高橋 信孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報