ネコブセンチュウ(読み)ねこぶせんちゅう(英語表記)root-knot nematode

改訂新版 世界大百科事典 「ネコブセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ネコブセンチュウ
root-knot nematode

植物の根に瘤(こぶ)をつくるメロイデギネ科Meloidogyninae亜科のセンチュウ総称。やや冷涼な地帯に多いキタネコブセンチュウMeloidogyne haplo,温暖な地帯に多いサツマイモネコブセンチュウM.incognitaなどセンチュウの中で農業上もっとも重要な種類が多数含まれる。ニンジンレタス,トマト,キュウリ,サツマイモ,リンゴなど,被害を受ける作物は非常に多い。幼虫が根に侵入して維管束近くに定着すると,幼虫が分泌する成長ホルモンの刺激を受けて周辺の細胞が異常分裂肥大を起こし,一部は融合して多核質の巨大細胞を形成する。幼虫はこの巨大細胞から栄養を摂取し発育する。根は部分的に肥厚して瘤を形成し,地上部は生育不良となる。雌成虫は長さ約0.6mmのヨウナシ形に肥大し,体外に分泌したゼラチン状物質の中に数百個の卵を産む。寄生範囲の広いものが多いが,種類によって寄生する作物が少しずつ違うので,輪作を基本として,抵抗性品種や薬剤処理をそれに組み合わせて防除する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネコブセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ネコブセンチュウ
ねこぶせんちゅう / 根瘤線虫
root-knot nematode
[学] Meloidogyne spp.

袋形(たいけい)動物門線虫綱の1属の総称。代表的な植物寄生線虫で、熱帯地方を中心に温帯にも及ぶ世界的分布を示し、草や木を問わず広範囲の植物の根に寄生し、線虫の寄生部位の組織が膨れてこぶ状になるのでこの名がある。線虫は、体長0.5ミリメートルの細長い幼虫が根の表皮から侵入し、組織内に落ち着くとその場所で組織細胞を栄養に成長を続け、体長約1.5ミリメートルの細長い雄成虫、または直径1ミリメートル内外の球形ないし洋ナシ形の雌成虫となる。雌は500~800個の卵を尾端のゼラチン質の袋に産み出す。寄主植物は、大量の幼虫の寄生で根がこぶだらけになり、根の機能低下で生育が遅れ、枯死することも少なくない。また、こぶの部分から病菌が入りやすく、病害を併発し被害をいっそう大きくする。トマト、キュウリ、サツマイモ、ラッカセイ、タバコ、コンニャク、クワ、ブドウ、モモ、リンゴ、サクラなど多くの作物や樹木に被害を及ぼす。日本では、サツマイモネコブセンチュウM. incognita、キタネコブセンチュウM. haplaなど5種ほどが重要で、1世代には30~40日を要する。

一戸 稔]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネコブセンチュウ」の意味・わかりやすい解説

ネコブセンチュウ
Meloidogyne; root-knot eelworm

袋形動物門線虫綱チレンクス目ネコブセンチュウ属の種類の総称。体は微小で細長い。ジャガイモ,ナンキンマメなどの多くの植物の根に寄生する植物寄生性の線虫で,被害を受けた根の組織は瘤状にふくらむ。雌は瘤の中に 500個以上の卵を産む。日本ではキタネコブセンチュウ M. haplaなど数種が知られている。

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