日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスパラガス」の意味・わかりやすい解説
アスパラガス
あすぱらがす
[学] Asparagus officinalis L.
ユリ科(APG分類:キジカクシ科)の多年草。和名オランダキジカクシ、マツバウドともよばれる。ヨーロッパ、西アジア、クリミア半島の原産で、世界の温帯各地に栽培される。春から夏にかけて、鱗(うろこ)状の頭部をもった筆の穂先形の太い芽を出す。食用にするのはこの新芽である。茎は多肉質で高さ1.5~2.5メートル、直立した主茎から多くの分枝を出し、各分枝の先は1~2センチメートルの松葉状の小枝となる。この「アスパラガスの葉」は植物学的には枝で、偽葉とよばれる。葉は茎の各節部に、三角形の鱗片(りんぺん)状に退化しており、茎が成長すると自然に脱落する。雌雄異株で、夏に鱗片葉の葉腋(ようえき)に1~2個の黄白色の花をつける。花弁は6枚、筒状で全開しない。夏から秋にかけて雌株に直径7~8ミリメートルの緋紅(ひこう)色の球形の果実をつける。秋に地上部は枯れる。
[星川清親 2019年3月20日]
栽培
早春に種子をまいて、1年間育苗し、翌春、芽が出る前に定植する。収穫は播種(はしゅ)後3年目ごろ、食用にできる太い若芽が出るようになってから可能である。一度植えれば、10年間ぐらいは同じ株から収穫することができる。雄株は雌株に比較して、若茎の発生数が2~5割程度多いが、逆に若茎の太さは雌株のほうが雄株の若茎より太くなる。栽培時に雌株と雄株を見分ける確実な方法がない。
[星川清親 2019年3月20日]
近縁種
アスパラガスの近縁種には、観賞用に栽培されるものが多い。もっとも広く栽培されるのはシノブボウキA. plumosus Baker var. nanus Nichols.で、装飾用の切り葉や鉢植え用に用いられる。一般にはプルモーサスの名でよばれることが多い。スギノハカズラA. sprengeri Regelは荒めの葉を四方に出して下垂し、吊鉢(つりばち)用に多く用いられる。タチボウキA. myriocladus Hort.は松葉状の小葉をつけ、高さ1~2メートルの低木状となる。大形の切り枝、温室観葉として用いられる。花壇の縁植えなどに利用されるタチテンモンドウA. pygmaeus Makinoは高さは約20センチメートル、耐寒性に優れている。繁殖は春に株分けを行う。
[星川清親 2019年3月20日]
利用
日本へは18世紀にオランダから渡来したが、当時は観賞用として庭園に植えられた。明治初期にアメリカやフランスから再導入され、食用として栽培されるようになった。1923年(大正12)ごろから北海道で、缶詰用に軟白したホワイトアスパラガスの栽培が盛んになった。ホワイトアスパラガスは若芽が地上に出ないように地表から20センチメートル程度に土寄せをして、白く軟らかな地中の若芽を収穫するものである。土寄せをせず、地上に伸ばした緑の若芽を収穫するグリーンアスパラガスは1955年(昭和30)ころから市場に出回るようになった。主産地は、北海道、長野、佐賀、長崎、熊本の各県である。
[星川清親 2019年3月20日]
料理
アスパラガスはタンパク質含量の高い野菜で、とくにアミノ酸の一種アスパラギンの多いことが特徴である。栄養的にはグリーンアスパラガスのほうがホワイトよりも優れ、ビタミンCやカロチンの含量がはるかに高い。なお、缶詰製品にある特有の香気は、含硫化合物やアミノ酸が分解して生じるものである。
グリーンアスパラガスは、サラダやバターいためのほか、グラタンなどに用いる。熱いうちにレモン汁やバターを添えてもよく、ホワイトソースもよくあう。ごまや、からしじょうゆで和(あ)えたり、煮物のあしらいなど、和風にもよい。新鮮さが勝負なので、生きのよいものを求め、手早く調理することが肝心である。ホワイトアスパラガスは、八百屋の店頭に出ることは少なく、大部分は缶詰、瓶詰に加工されて市販される。そのままでサラダや付け合わせに用い、またフライ、グラタン、スープの実などにも使う。穂先がとくに賞味されるので、調理にはこの部分を傷めないように、たとえば缶詰は底のほうをあけて中身を取り出すなどの注意が必要である。
[星川清親 2019年3月20日]