精選版 日本国語大辞典 「線虫」の意味・読み・例文・類語
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線形動物門Nematodaの総称。ネマトーダともいう。体は糸状あるいは円筒状で体節に分かれず、体表はクチクラに覆われて棘(とげ)や剛毛などをもつものもある。消化器は頭端の口に始まり、筋肉質の咽頭(いんとう)とそれに続く細長い腸が体を縦走し、尾端近くの肛門(こうもん)に終わる。雌雄異体で、雌のほうが大きく、雄の尾端は湾曲している。生殖器は管状で、雌の生殖孔は独立して腹側に開くが、雄の生殖孔は肛門といっしょ(総排出腔(こう))になっている。種類によっては発育環の一時期雌だけとなり単為生殖をし、世代交代を行うものもある。幼虫は4回脱皮して成虫になるが、脱皮と脱皮との間に成長する。
線虫は地球上のあらゆる所に生息し、その生活様式も変化に富む。自活線虫は海洋、淡水、土壌中で腐敗有機物、細菌、ほかの動植物などを食物とし、極地や高山、温泉や酢の中でも生活する。土壌線虫のシーエレガンスCaenorhabditis elegans(体長1ミリメートル)は、卵から成虫までの細胞の分裂パターンや組織への分化のしくみが解読され、実験生物学の重要な材料になっている。寄生線虫は動物と植物に寄生するが、まれに動物と植物に交互に寄生する種類もみられる。
動物寄生線虫は無脊椎(むせきつい)動物(昆虫が多い)から脊椎動物に寄生し、寄生部位もいろいろで、ヒトや家畜の疾病の原因となる鉤虫(こうちゅう)、回虫、蟯虫(ぎょうちゅう)、糸状虫、鞭虫(べんちゅう)などを含む。また、植物寄生線虫はネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シストセンチュウ、マツノザイセンチュウなど農作物や樹木に被害を与える種類も少なくないが、有害昆虫の天敵として利用されるものもある。寄生線虫には発育環の一時期に自活生活をしたり、中間宿主をもつものもある。自活および植物寄生線虫は一般に小さく、体長は普通0.5~4ミリメートルであるが、海産種には5センチメートルに達するものもある。動物寄生線虫は体長1ミリメートルに満たないものから、腎虫(じんちゅう)やメジナ虫の雌のように体長1メートルを超えるもの、マッコウクジラの胎盤に寄生するプラセントネマ属Placentonemaの雄の体長2~4メートル、雌6~9メートルになるものまである。
線虫は海洋の祖先型を起源として、淡水や陸上に広がったと考えられる。しかし、現在陸上に生息する線虫は海洋や淡水の祖先型から過去何回となく進化を繰り返し、また淡水型のなかには陸上型に由来するもの、陸上型から逆に海洋型に戻ったものもある。一方、寄生型も海洋、淡水あるいは陸上型から何回となく寄生への適応が繰り返され、現在のような寄生線虫が成立したと思われる。このため線虫類の系統分類は非常にむずかしく、いまなお一定していない。
現在、約1万種の線虫が知られているが、地球上にはおそらく50万種以上の線虫が生息していると推定される。個体数もまたきわめて多く、腐ったリンゴ1個に9万匹、6~7ccの土壌中に36種1000匹の線虫がいるという記録がある。
[町田昌昭]
(2015-3-13)
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