改訂新版 世界大百科事典 「マリゴールド」の意味・わかりやすい解説
マリゴールド
marigold
Tagetes
キク科マンジュギク属Tagetesの一年草あるいは多年草で,中南米に30種以上が分布する。花壇や鉢植え,切花に栽培される園芸種マリゴールドの基となったのは,それらのうちT.erecta L.(改良種をアフリカン・マリゴールドAfrican marigoldと呼ぶ)とT.patula L.(改良種をフレンチ・マリゴールドFrench marigoldという)である。前者は,マンジュギク(万寿菊),センジュギク(千寿菊)と呼ばれる大型種で,改良品は高さ80cm,粗く枝を分けて頂端に大きな頭状花をつける。花色は黄,クリーム,レモン,オレンジなど。原種は葉に強い臭気があるが,改良種は無臭。アメリカで改良が進み,花型として菊咲き,クラウン咲き,カーネーション咲き,ピオニー咲きなどの多数の品種が作出されている。最近はとくに矮性(わいせい)大輪の系統がアメリカで作出され,アメリカン・マリゴールドAmerican marigoldとも呼ばれている。Aztec marigold,big marigoldの英名もある。後者は,コウオウソウ(紅黄草),クジャクソウ(孔雀草)などと呼ばれる矮性小輪種で,園芸種は高さ20~30cm,多数の枝を分けて一重,八重,クラウン,万重などの花型の小輪花をつける。花色は黄,レモン,オレンジなどであるが,栗赤色が混じるのが特徴である。両者とも種まきはふつう3~4月,開花は初夏から晩秋まで。とくに早まきしたものは3~4月に開花させることもできる。鉢植えやプランター,花壇にはアメリカン・マリゴールドがよく,フレンチ・マリゴールドは花壇,鉢植えに好適である。アフリカン・マリゴールドはまきどきを遅らせて初秋にまけば,年末には20~30cmで花をつけ,鉢植えとして利用できる。
近縁のヒメコウオウソウT.tenuifolia Cav.はとくに矮性で葉が小さく,小鉢植えとして利用できるが,栽培は比較的少ない。
執筆者:浅山 英一
民俗
マリゴールドは聖母マリアの持物とされている。荒天や嵐に耐え,夏の太陽の下で花を開き,闇に対してはそれを閉じる姿が,聖母を彷彿(ほうふつ)させるためだという。また聖母をまつる建物に設けられた円形のばら窓は〈マリゴールド窓marigold window〉と呼ばれている。この花の名称は〈マリアの黄金mary's gold〉を意味し,その黄色い花盤が聖母の背光ないし太陽(キリストあるいは神の象徴)を表すとの俗説もある。しかし元来mariとはフランス語のmarais(〈沼〉の意)がなまったもので,マリアとは関係ないといわれる。その好日性を利用して,イギリスではその日の天気を占う風習があった。そのほかこの花は恋占いにも広く用いられ,属名も,前兆による予言術をエトルリア人に教えた神タゲスTagesにちなんで付けられた。花言葉は〈悲哀〉。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報