日本大百科全書(ニッポニカ) 「殿閣学士」の意味・わかりやすい解説
殿閣学士
でんかくがくし
旧中国の官職名。殿閣とはこの場合、宮中に設けられた蔵書の建物をさし、ここに勤務する学士は天子の顧問の地位にあり、文筆の職に任じた。この制度は唐代の集賢殿学士に始まり、宋(そう)代(960~1279)にもっとも盛んとなり、観文殿(かんぶんでん)、資政殿(しせいでん)、端明殿(たんめいでん)、天章閣(てんしょうかく)など多数の殿閣があり、学士、待制などが置かれ、多くは他官をもって兼ね、館職と称せられて、もっとも名誉ある肩書で、宰相級の大臣が兼ねるときは大学士と称した。明(みん)代には武英殿(ぶえいでん)、文淵閣(ぶんえんかく)など各種の大学士があり、初め独立した官で皇太子の補導に任じたが、のちにこれが宰相の職務を行い、数人の殿閣大学士が内閣大学士と称せられ、天子を補佐する任となって清(しん)代まで続いた。
[宮崎市定]