広義には,青少年問題に関与する諸機関が,なんらかの問題をもつ青少年などに対して,一般教育(家庭教育,学校教育,職業教育,社会教育など)を補充する形で行う教育福祉的活動をいう。しかし狭義には,政府の青少年対策の重要な一環とされる非行防止活動のうちで,少年係警察官や婦人補導員などの警察職員が民間人や民間組織(児童相談所,福祉事務所,教育委員会など)の協力を得て行う,非行など問題のある青少年に対する指導・助言・相談などの活動を指す。第2次大戦の敗戦直後の民主化過程のなかで,児童福祉法(1947),少年法(1948),少し遅れて児童憲章(1951)が制定され,青少年の補導は,これら諸法の理念の充実した実現を求める国民と,関係諸機関の連帯とによって行われるのが理想とされた。しかし反面,政府は当初,非行対策を浮浪児狩りという青少年治安対策に求め,1950年代に入ると全般的に非行対策を強化した。54年6月には自治体警察を解体して警察の中央集権化を完成した新警察法が制定されたが,このころから非行対策が青少年対策の重要な一環に据えられ,少年係警察官主導の補導活動が青少年補導の中核を占めるにいたった。60年代の高度経済成長政策は総合的な青少年対策を必要とし,それを治安面から支持するために,少年係警察官を主体とする補導体制を整備させ,同時に,警察・検察の権限強化を目的とする少年法改正作業を具体化させた。ここに狭義の補導が主流となっている理由がある。しかし警察補導に対しては,(1)法的根拠があいまいであるのに自由裁量の余地が大きく,人権侵害のおそれがある,(2)警察は本来の捜査に徹し,補導は教育福祉活動を主任務とする機関にゆだねるべきである,などの指摘がなされている。
活動の方法としては,〈少年相談〉を設け,指導・助言あるいは関係機関への引継ぎを行う場合と,早期発見の方法として効果をあげている〈街頭補導〉がある。措置としては,現場かぎりの注意・助言,家庭,学校,職場への連絡,保護者への引渡しなどがある。地域組織としては,少年補導センター,少年補導委員,学校警察連絡協議会,職場警察連絡協議会などがある。70年代以降,児童生徒の非行や暴力行為が目だっているが,たんなる指導・助言におわらず,家庭生活,友人関係,性問題など青少年の内面を配慮した指導が求められている。
→非行 →児童福祉
執筆者:赤羽 忠之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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