学士(読み)ガクシ

デジタル大辞泉 「学士」の意味・読み・例文・類語

がく‐し【学士】

大学などの卒業者に与えられる学位
学問をする人。学者
「開師、三宅石庵王陽明の風な―ぢゃが」〈胆大小心録
律令制で、皇太子経書を講じた東宮とうぐう職員東宮学士
東宮の―つかまつるべきよし仰せらるるほどに」〈宇津保・俊蔭〉

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精選版 日本国語大辞典 「学士」の意味・読み・例文・類語

がく‐し【学士】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 学問に従事する人。学者。
    1. [初出の実例]「学士ありて問て云」(出典:集義和書(1676頃)八)
    2. 「学士朋友などの来り、我等若くは役人通事の安着を賀するを受く」(出典:日本風俗備考(1833)二二)
    3. [その他の文献]〔史記‐儒林伝〕
  3. 令制で東宮(皇太子)に経書を講読した学者。定員二人。官位相当は東宮学士(とうぐうがくし)。〔令義解(718)〕
  4. 大学卒業生に与えられる称号。また、その人。
    1. (イ) 旧帝国大学の各分科大学(のち、各学部)、あるいは旧制大学、あるいはこれらに準ずる医学専門学校などの卒業生が称することのできた称号。法学士、医学士、工学士、文学士、理学士、農学士、薬学士、経済学士、林学士、獣医学士、神学士、政治学士、商学士、歯学士などがあった。また、これらの称号を持つ人。
      1. [初出の実例]「飽くまで学問を脩行させて〈略〉博士学士(ガクシ)になさまほし」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四)
    2. (ロ) 学位の一つ。大学の学部を卒業した者に与えられる。
    3. (イ) に加えて、教養学士、教育学士、社会学士、経営学士、家政学士、商船学士、水産学士、芸術学士、体育学士などが設けられている。また、これらの称号を持つ人。

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普及版 字通 「学士」の読み・字形・画数・意味

【学士】がくし

学問をする人。学者。〔韓非子顕学するなり。上のは學士なり。には則ちを重くし、學士には則ち賞を多くす。

字通「学」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「学士」の意味・わかりやすい解説

学士 (がくし)

大学卒業者に与えられる学位。新制大学発足時は24種,旧制大学時代は12種であった。現在の学士制度は欧米の大学卒業者に与えられるバチェラーbachelorの制度を移入したものである。しかし,日本の大学制度の中に学士制度があらわれたのは1872年(明治5)の〈学制〉の中であり,この時は古代の律令制度にならって,博士(はかせ),得業士と並んで大学卒業生への学位の一つとされた。東京大学の創立(1877)以降,欧米大学の制度にならった学士制度が実施されたが,この時も,学士は学位であり,高い威信をもつものとされた。しかし帝国大学制度の発足(1886)以後,学士号は帝国大学卒業生の称号となり,大正期以降公・私立大学が生まれると,その卒業生にも与えられるようになった。第2次大戦前の学士号がある種の社会的威信をもっていたのに対し,戦後はほとんどそれが失われ,たんなる称号とされていたが,1991年に学位規則が大幅に改正され,学士も博士,修士と同様,学位の一種とされることになった。また同時に〈科目等履修生制度〉が創設され,規定の科目単位数を取得した者には学士学位が与えられることになった。
学位
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「学士」の意味・わかりやすい解説

学士
がくし

学位の一種。イギリス、アメリカではバチェラーbachelor、フランスではリサンスlicenceで、3、4年の大学卒業生に授与される。日本で学士制度が現れるのは1872年(明治5)の「学制」からで、学位の一つであったが、1886年の帝国大学発足以後、「学士」は称号となり、3年在籍を要件とした。新制大学では、1947年(昭和22)に発足した当時は4年在籍を履修要件とし、称号扱いであったが、1991年(平成3)学位規則が改正され、学士の称号は学位となった。また、それまで大学卒業者にしか与えられていなかった学士号は、同年設置された学位授与機構(現、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構)により、大学校(防衛大学校海上保安大学校など)の卒業者や、短期大学、高等専門学校を卒業して大学などで必要な単位を累積取得した者にも授与されるようになった。

[金子忠史]

『絹川正吉・舘昭編著『学士課程教育の改革』(2004・東信堂)』

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大学事典 「学士」の解説

学士
がくし

学士号または学士号取得者(日本)を指す。学士号(日本)は,日本ではおおむね大学の学部で4年の学修を終え授与される称号である。明治時代には当初学士号は安定せず,1886年(明治19)の帝国大学令で帝国大学卒業生に与えられる称号となり,翌年の学位令で学位から外された。学士といえば帝大卒という時期もあったが,徐々に対象者が広がり,1919年(大正8)の大学令施行で本格的に帝国大学以外に広がった。もともとバチェラーは,ヨーロッパの中世大学において,学生と教師(ドクター)の中間に位置し,半人前のドクター,教師の助手として位置づけられていた。だが,バチェラーが最も明確に位置づけられ定着したのは,国家資格が学位よりも優位となったヨーロッパよりも,大学院教育がカレッジ教育から分離し,大量のバチェラーを生むことになったアメリカ合衆国であった。日本では学士よりも「大卒(日本)」のほうが流通しているが,1991年(平成3)の学位規則改正以降,学士号が学位として位置づけられ,4年間の大学教育を,教育目標やカリキュラムが明確化された学位プログラム化(日本)することで,よりアメリカ的な学士課程教育として位置づけようとする取組みがなされている。
著者: 阿曽沼明裕

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百科事典マイペディア 「学士」の意味・わかりやすい解説

学士【がくし】

大学短期大学を除く)卒業者に与えられる学位。日本の学士制度は1872年の〈学制〉で始まった。1886年帝国大学制度以降,帝国大学卒業生の称号となり,大正期以降は公・私立大学卒業生にも同じ称号が与えられた。第2次大戦前までの学士号は社会的威信が高かったが,戦後はその威信も低下している。学士号は専攻に応じた種類があったが,1991年の大学設置基準改正により種類はなくなり,また同時に行われた学位規則改正により,学士も学位の一種とされた。さらに大学卒業者以外にも,所定の科目単位数を取得した者には学位授与機構から学士学位が与えられることとなった。

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世界大百科事典(旧版)内の学士の言及

【学位】より

…専門的な学問を修得したこと,あるいは学術上の創造的業績をあげたことを証明するために,大学または国家が与える称号。日本では学士,修士,博士(はくし)の三つがある。
[沿革]
 博士をはじめとする学位制度の起源は中世ヨーロッパの大学にある。…

【翰林学士】より

…天子の秘書であり,また政治の顧問にあずかった。その宮中における出仕の館,翰林学士院は略して翰林院,また学士院と称せられ,雅名を翰苑という。翰林学士は初め,書画医卜などの専門家と共に宮中に召され,翰林待詔と呼ばれたが,玄宗の開元26年(738)独立して学士と称せられるようになった。…

※「学士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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