大学事典 「比較高等教育学」の解説
比較高等教育学
ひかくこうとうきょういくがく
高等教育に関わるあらゆる事象を対象とし,比較という手法を用いて複数の国家・地域・文化圏やシステム,さらには個別機関について横断的に分析し,そこに類似点や相違点,一定の法則性や類型を見いだす学問分野。異なる時代間の通時比較(比較史)や留学・国際交流の各種実践分析(国際教育学)も含みうる。マクロな文脈での定評のある研究成果として,①国家権威・大学寡頭制・市場の3頂点からなる三角形を想定し,各国の高等教育システムがその内側に位置し,3力の間の調整や力学の中でシステムのあり方が決まるとするクラークの分析枠組み(Burton R. Clark,B.R.)の分析枠組み,②従属理論を援用し,中心と周辺との影響関係を概括したアルトバックの枠組み(Philip G. Altbach,P.G.)の枠組みなどを挙げうる。制度・政策や大学が当該社会で果たす機能の分析結果は従来かなり蓄積されてきたが,教育の中身,すなわちカリキュラムや教授法に関わる比較分析はいまだ十分に行われてきたとは言い難い。
著者: 大塚豊
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報