日本大百科全書(ニッポニカ) 「河童駒引考」の意味・わかりやすい解説
河童駒引考
かっぱこまひきこう
民族学者、石田英一郎の著。1948年(昭和23)1月筑摩(ちくま)書房刊。副題「比較民族学的研究」。馬と水神、牛と水神、猿と水神の3章からなる。柳田国男(やなぎたくにお)の『山島民譚(さんとうみんたん)集』の後を受けて、水神と馬、牛、猿などとの関係を比較民族学的に検討し、その文化史的再構成を図ったものである。すなわち、古代農耕社会においては牛が水神や豊饒(ほうじょう)儀礼と深く関係していたが、のちに馬がそれにとってかわった。また馬は猿との関係も深く、日本では水神が零落し妖怪(ようかい)化した結果、馬を水中に引込もうとする河童駒引の伝説が語られるようになったとする。
[倉石忠彦]
『石田英一郎著『新版河童駒引考』(1966・東京大学出版会)』