日本大百科全書(ニッポニカ) 「洗冤録」の意味・わかりやすい解説
洗冤録
せんえんろく
中国、宋(そう)代の法医学書。正式には『洗冤集録』といい、全二巻からなる。1247年南宋の宋慈(そうじ)(1186―1249)により撰述(せんじゅつ)された。宋慈は、字(あざな)を恵父といい、建陽(現福建省建寧県)の人で、長く刑獄の仕事に従事し、その間の経験とそれまでにあった類書を参考にしてこの書を著したといわれる。『洗冤録』は、検屍(けんし)の進め方、死体の死後現象、自縊(じい)・絞死・溺死(できし)・刀剣による殺傷などの際の自他殺の鑑定法など、多数の項目を系統的に記述している。一部には現代の知識からみて正しくないものもあるが、当時の知識水準や鑑定方法を知るうえで重要である。この書がもととなってその後『平冤録』や『無冤録』などの類書が生まれ、日本にも伝来した。
[内田 謙]