日本大百科全書(ニッポニカ) 「洞窟の女王」の意味・わかりやすい解説
洞窟の女王
どうくつのじょおう
She
イギリスの作家ヘンリー・ライダー・ハガードの秘境冒険小説で、ビクトリア朝伝奇文学を代表する雄編。1887年刊。中央アフリカに向かったイギリス探検隊は、人跡未踏の奥地で白人の絶世の美女が君臨する王国を発見する。妖(あや)しい術を使う女王アッシアはローマ時代の乙女だが、不滅の恋によって不老不死の生命を吹き込まれて、原住民を支配し、恋人の再来を待っていた。探検隊のなかに死んだ恋人と瓜(うり)二つの青年レオがいた。彼女はレオとともに永遠の生命の炎を浴びようとするが、いかなる手違いからか彼女はミイラと化してしまう。いまわのきわに彼女は、「私は死なない、また、よみがえる」ということばを残す。不滅の恋に由来する不死性とロスト・ワールドという本編のテーマは、後世のSFとファンタジーに大きな影響を与えた。
[厚木 淳]
『大久保康雄訳『洞窟の女王』(創元推理文庫)』