日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハガード」の意味・わかりやすい解説
ハガード
はがーど
Sir Henry Rider Haggard
(1856―1925)
イギリスの小説家。植民地行政の官吏として6年間、南アフリカで過ごしたのち1880年帰国。この間の経験を生かして『ソロモン王の洞窟(どうくつ)』(1885)を発表して成功を収め、翌年には『洞窟の女王』を書いて前作を上回る好評を博した。いずれもアフリカの秘境を舞台にした怪奇と幻想の冒険小説で、ビクトリア朝伝奇小説の代表作。その後『ソロモン王の洞窟』のヒーロー、アラン・クオーターメインを主人公とするシリーズ『二人の女王』(1887)、『古代のアラン』(1920)や、女王アッシャをヒロインとする『女王の復活』(1905)など40冊以上の作品を残したが、それらの作品に含まれるロスト・ワールド、不死性、タイム・トラベルなどファンタジーの要素は、E・R・バローズを介して20世紀のSFに大きな影響を与えた。1912年ナイトに叙せられたが、これは創作のかたわら打ち込んでいた農政研究の功によるもの。
[厚木 淳]
『伊藤礼訳『ソロモン王の宝窟』(1978・筑摩書房)』▽『大久保康雄訳『ソロモン王の洞窟』(創元推理文庫)』