流動性ジレンマ(読み)りゅうどうせいジレンマ(英語表記)liquidity dilemma

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「流動性ジレンマ」の意味・わかりやすい解説

流動性ジレンマ
りゅうどうせいジレンマ
liquidity dilemma

1958年にエール大学の R.トリフィン教授が創唱した考え方で,金為替本位制度下においては,基軸通貨国通貨による国際流動性増加とその通貨への信認とは両立しにくいことをいう。トリフィンは国際流動性が基軸通貨国の赤字によって供給される場合,金が流出し,その国の通貨に対する信認が低下する。逆に基軸通貨国が国際収支黒字を増大させようとすると,通貨に対する信認は得られるが,国際流動性が不足すると主張した。しかし世界貿易は国際流動性と関数関係に立つものではなく,各国貿易金融ユーロ・ダラー市場などの金融便宜も別途存在するため,流動性ジレンマ論の妥当性は疑問とみられるにいたった。

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