海岸侵食(読み)かいがんしんしょく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海岸侵食」の意味・わかりやすい解説

海岸侵食
かいがんしんしょく

海の波や潮流によって海岸侵食され後退する現象。海食ともいう。一般に波高の大きい波は、陸地を侵食する力が大きい。また、海岸を構成する岩石が軟弱な場所では、海岸侵食を受けやすい。したがって、外洋に面した場所で、第三紀層や第四紀層の軟弱な地層の分布する所が、海岸侵食の激しい所と一致する。また、潮流による海岸侵食現象は、潮差の大きな地方のデルタ海岸にみられる。

 岩石の硬い地質でも、断層などの割れ目に沿って選択的な侵食が行われることがあり、長期的には相当な幅にわたって海岸侵食がみられるものである。やや短期的にみると、海岸線は砂礫(されき)の供給量と波の力とのバランスのうえに保たれている。したがって、河川上流部でのダムの建設とか、河口の付け替え、突堤の建設などによって砂礫の供給が減少すると、海岸侵食が激しくなる。アスワン・ハイ・ダムの建設の影響によるナイル川河口部の侵食や、新潟市の海岸侵食などはその例といえる。

[豊島吉則]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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