海洋中にある種々の化学物質,熱量,プランクトン等は空間的に一様に分布しておらず,いわば濃淡がある。この分布を一様にするような運動を海洋拡散と呼ぶ。機構として,分子拡散と乱流拡散がある。分子拡散は分子レベルの拡散で行なわれ,理論は A.フィックにより確立されている。乱流拡散は流れの場が乱流状態にあるために起こる現象で,統計的な手法での近づきが G. I.テーラーにより進められた。現象を平均と乱れという概念に分離し,平均場に対して乱れが果たす役割の大きさで,拡散の強度を議論する。分子拡散と乱流拡散とでは,乱流拡散が圧倒的に大きい。