日本大百科全書(ニッポニカ) 「海運市況」の意味・わかりやすい解説
海運市況
かいうんしきょう
海運市場において貨物と船腹の需給関係で変動する海上運賃、用船料、船価の状況。定期船市場は独占市場である。それに対し、不定期船市場は多様な時期と場所で、多数の荷主がいろいろな種類や数量の貨物を持ち込み、多数の運航業者がそれぞれの船舶を提供しあうという典型的な自由競争市場であり、そこに絶えず変動する市況が形成される。海運市況は、一般的には世界および各国の景気循環に遅れる形で変動するが、他に比べ海運用役が即時財、無形財であることをはじめ、その供給の非弾力性や需給の地域的ギャップ、天候や戦争に左右される需要などの要因で激しく変動する。しかし第二次世界大戦後のインダストリアル・キャリッジ化のなかで、不定期船市場はほとんど非公開市場となり、その著しく狭められた自由市場では、わずかな需給の変動で海運市況が激しく乱高下するようになった。中国を中心とする新興経済国の成長のもとで、不定期船の用船料指数は2003年ごろから上昇し、またタンカー運賃指数は2003~2005年までは上昇した。しかし、その後の世界的な不況のなかで低落しつつある。なお、海運市況はイギリスのロイズ・シッピング・エコノミスト社の運賃・用船料指数で知ることができる。
[篠原陽一]