日本大百科全書(ニッポニカ) 「深川八景」の意味・わかりやすい解説
深川八景
ふかがわはっけい
荻江(おぎえ)節の曲名。作曲者不詳。1876年(明治9)4世荻江露友(ろゆう)の襲名披露に演奏された曲といわれる。江戸深川の名所(永代橋の水鏡、永代寺の晩鐘、冬の木場、塩浜、仲町(なかちょう)、洲崎弁天、佃(つくだ)の雨、深川八幡宮(はちまんぐう))を近江(おうみ)八景になぞらえ、春夏秋冬の四季の景色の移り変わりを歌っている。曲調は三下りで、前弾(まえびき)には「佃の合方(あいかた)」を取り入れ、深川の川端の描写を行い、短い合方のなかにも、三味線の主旋律と上調子(うわぢょうし)を効果的に絡ませている。全体に粋(いき)な雰囲気をかもし出した荻江節を代表する曲。
[茂手木潔子]