改訂新版 世界大百科事典 「清国行政法」の意味・わかりやすい解説
清国行政法 (しんこくぎょうせいほう)
中国,清代の政治機構に関する包括的な研究書。全6巻7冊。索引1冊から成り,1905-15年に刊行された。日清戦争の結果,台湾が日本の植民地となると,総督府民政長官後藤新平は台湾統治上の必要から1901年に臨時台湾旧慣調査会を発足させ,専門学者による現地旧慣の科学的調査に着手した。その主な成果が《台湾私法》とこの《清国行政法》である。同書の編纂は京都大学の行政法教授織田万に委嘱され,彼と無双の中国学者狩野直喜が委員,浅井虎夫,加藤繁,東川徳治が補助委員となって行われた。内容は和・漢・洋の諸資料,とりわけ《嘉慶大清会典》と《嘉慶会典事例》に基づいて近代法学としての行政法学の立場から清国の現行制度を解明したものである。中国社会の実態を知るうえで必要な諸問題を取り上げていないなどの欠点もあるが,清国の行政全般に説き及んだものとして今日なお最良の研究書である。
執筆者:井上 裕正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報