渡嘉敷間切(読み)とうかしちまぎり

日本歴史地名大系 「渡嘉敷間切」の解説

渡嘉敷間切
とうかしちまぎり

渡嘉敷島前慶良間めーぎらま(前島)などで構成される琉球王国の地方行政区画。座間味じやまん間切とともに慶良間島のうちで、また久米方に属し、久米方六ヵ間切とも称された。慶良間島は馬歯山ばしざんともいわれるが(指南広義・中山伝信録)、うち東馬歯山に相当する。現渡嘉敷村をその範囲とする。慶伊ちー干瀬の三島のほか、一〇余の無人島があり、なかでも島の北端部に続く儀志布じしつぷ島とその北東に浮ぶくる島は島そのものが航海安全の神として信仰されてきた。当間切では多くの唐船乗り・飛船乗りを輩出しているが、とりわけ兄弟や夫・息子の死出の旅ともなる唐旅の際には留守家族による航海安全祈願は欠かせないものであった。絵図郷村帳に「とかしき島 渡嘉敷間切」とあり、渡嘉敷村・阿波連あはり村が記される。のち渡嘉敷村に編入される小嶺くんみ村も当間切のうちで、めー島をもって一ヵ村とする前慶良間村や、黒島も当間切であった。「おもろさうし」巻一三の二六に「一 よきなわか もちよろ(ヨキナワ〔神女〕がもぢょろ)/かみにしやかもちよろ(神女様がもぢょろ)/けおみちへ(霊力満ちて)/ももと みふさよわれ(百年見栄えたまえ)/又 きこゑあちおそいや(有名な按司襲いが)/とよむあんしおそいや(鳴響む按司襲いは)/又 となき はし しよわちへ(渡名喜を橋にしたまいて)/けらま よと しよわちへ(慶良間を淀にしたまいて)/又 とかしきに おわちへ(渡嘉敷に来られて)/ふうまわり おわちへ(報回りの島に来られて)」とある。同書巻一〇の二六に「一 みなにまちらすか(みなに〔語義未詳〕マチラス〔神女〕が)かほう もも ゑらひ(果報 百 選び)/又 とむにまちらす(とむに〔語義未詳〕マチラスが)/又 とかしきのあかなさ(渡嘉敷の我等の父老)/又 なりむらのあかなさ(なり村の我等の父老)/なかむらのそやけこ(中村のそやけ子)/又 ももゑらひは おしうけて(百選び〔の船〕を押し浮けて)/やそゑらひは おしうけて(八十選び〔の船〕を押し浮けて)/又 せとしないおうね(船頭に調和した御船)/ぬししないおうね(主に調和した御船)/又 かせむかて わきあかて(風に向かって〔船が〕沸き上がって)/きたむかて わきあかて(北風に向かって沸き上がって)/又 あめふりやり すみあかて(雨降って〔空が〕澄み上がって)/又 くれふりやり すみあかて(雨降って晴れ上がり)/又 おさんたけ ぬきあてれ(ウサン嶽 目指して)/又 まこちあな のきあてれ(真東の穴を目指して)」とある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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