沖縄最古の歌謡集。オモロまたはウムイは,沖縄・奄美諸島に伝わる古い歌謡のこと。ほぼ12世紀ころから17世紀初頭にわたってうたわれた島々村々のウムイを首里王府で採録したのが《おもろさうし》22巻である。1531年の第1回結集事業で第1巻が成立,1613年に第2巻が成り,23年に第3巻以下の20巻ができあがったといわれる。収録歌数1554首,重複したものを除けば1248首とされる。原本は1709年に首里城の火災で失われ,現存する最古の写本は尚家本(しようけぼん)(1710筆写)である。同時に書写された安仁屋本(あにやぼん)は,言葉間書(注のこと)とくぎり点をもつのが特徴であったが,第2次大戦で行方不明となった。《校本おもろさうし》(仲原善忠・外間守善編)は安仁屋本系の仲吉本(なかよしぼん)を底本として諸本を参照したものである。
オモロの発生起源は,ウムイ,クエーナと呼ばれる古謡や,オタカベ,ミセセルと呼ばれる呪詞に関連させて考えることができる。南島古謡に共通する対語・対句による繰返しをもたず,叙述が短く構造化されていることは,歌形の新しい発展形態と考えられる。古代生活において,共同体と神と自然とのかかわりあいの中から発生した呪詞の,生活の拡大にともなう発展をオモロの形態にも発想にもたどることができるが,《おもろさうし》の中には,国王と神女を中心にした一群の神歌が質量ともに際だっている。《おもろさうし》の編纂は,尚真王時代に行われた王権強化とそれにともなう政教一致の支配体制確立に深くかかわっていることは確かである。漢字まじりひらがなをもって方言音を表す独特の表記法を作り出し,〈沖縄の歴史的かなづかい〉の規範となっていることや,一首の始めを示す〈一〉や繰返しを表す〈又〉記号の工夫も《おもろさうし》記載法の特徴となっている。
→沖縄[県][文学]
執筆者:外間 守善
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二二巻二二冊
原本 尚家
解説 古琉球期における古歌謡集。一千五五四首のオモロが収められている。ただし重複が多く実数は一千二四九首である。全二二巻のうち七巻は聞得大君をはじめ上級神女が王とともに行う祭祀儀礼などで謡われたもので、王を賛美祝福し王権の強化を願う神女オモロである。一〇巻は地方オモロで、各地の豪族や祭祀あるいは歴史上の事物や事件を謡う。二巻は航海に関するオモロで、一巻は沿岸航路、もう一巻は遠洋航路のオモロを収めている。島嶼貿易国家らしいユニークな主題で、宮古・八重山や南蛮・中国などが謡われているとともに、奄美の与論島や沖永良部島で採録したと思われるオモロ三〇首余もここに収められている。ほかにオモロの名人を謡った巻、各地のトピックスを謡った巻、近世王城で祭祀儀礼に実際に謡われたオモロをまとめた巻がある。各冊表紙には嘉靖一〇年・万暦四一年・天啓三年の紀年があり、内容は古琉球世界を示すとされる。一七〇九年に焼失、翌年再編された。重複もそのために生じた。二部製作し、おもろ主取家に一部、王府に一部保管されたが、王府にあった尚家本「おもろさうし」(県立博物館蔵)が現存し、その流麗闊達な筆致で国の重要文化財に指定されている。活字本に伊波普猷「校訂おもろさうし」(一九二五年)、外間守善・波照間永吉「定本おもろさうし」(二〇〇二年、角川書店)、注釈外間守善・西郷信綱「おもろさうし」(一九七二年、岩波書店)、おもろ研究会「おもろさうし精華抄」(一九八七年)、沖縄研究資料一四「尚家本おもろさうし」などがある。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
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沖縄の古謡集。全22巻。沖縄、奄美(あまみ)諸島に伝わる神歌を首里(しゅり)王府が採録編集したもの。収録歌数は1554首であるが、重複を除く実数は1248首である。第1巻は1531年(嘉靖10)、第2巻は1613年(万暦41)、第3巻以下は1623年(天啓3)に編纂(へんさん)されたが、第11、14、17、22の各巻には編年の記載がなく不明。表記は漢字を交えた平仮名書きであるが、沖縄語を写す独得の表記法が用いられている。原本は1709年の首里城の火災で失われ、1710年、具志川家に伝わる本から2部書き改めて、王城とおもろ主取(ぬしどり)(王府で謡われるオモロに関するすべてをつかさどった役職)安仁屋(あにや)家に格護された。現存の尚家(しょうけ)本(重要文化財)はその1本で、王城に伝えられたものである。現存するその他の諸本はすべて安仁屋本系統の写本である。安仁屋本系仲吉本を底本とし尚家本ほか諸本を校合した『校本おもろさうし』(仲原善忠・外間守善編、1965・角川書店)がある。
[外間守善]
『外間守善・西郷信綱校注『日本思想大系18 おもろさうし』(1972・岩波書店)』
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…また(11)は語頭のヤ行子音をdに変えている(例:dama〈山〉)。
【琉球語の文献資料】
韻文の資料は《おもろさうし》,組踊(くみおどり)の脚本,琉歌集の3種がおもなものである。また《混効験集》(1711)は《おもろさうし》のための古辞書である。…
※「おもろさうし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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