体を暖める用具。蛇紋石(じゃもんせき)などを温め、布や綿に包み、懐(ふところ)に入れる。軽石や滑石(かっせき)などを火で焼いたり、こんにゃくを煮て、代用品にしたりした。「薬用に用いる、ある種の青い滑らかな小石」(『日葡(にっぽ)辞書』)、「夏の温石と傾城の心とは冷たい」(『譬喩尽(ひゆづくし)』3)などといわれた。塩(しお)温石、焼石などとともに俳諧(はいかい)の冬の季語である。「温石のあかるる夜半やはつ桜」(『続猿蓑(さるみの)』、露沾(ろせん))「草奄(そうあん)に温石の暖唯(ただ)一つ」(高浜虚子)。転じてぼろ裂(ぎれ)に包むところから、粗末な服装をあざける言葉ともなっている。
[岡田袈裟男]
…医学上一種の熱罨法(ねつあんぽう)として腹痛,神経痛などにも利用される。古くは焼石や温石(おんじやく)などが使われていたが,元禄(1688‐1704)初めころ保温力の強いイヌタデやナスの茎などの灰(懐炉灰)に点火し金属性容器に密閉して燃焼させる懐炉が発明された。近代になると懐炉灰は桐灰,麻殻灰,ゴマ殻灰,わら灰,ヨモギ灰などに助燃剤を加えて紙袋に詰めたものに改良された。…
※「温石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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