日本大百科全書(ニッポニカ) 「満漢偶数制」の意味・わかりやすい解説
満漢偶数制
まんかんぐうすうせい
中国、清(しん)朝の中央官庁の官僚任用方法。満漢併用、満漢箝制(けんせい)(牽制(けんせい)と同意)ともいう。清朝は満洲族が漢民族を支配した王朝であるが、当時の満洲族は政治的、文化的に未熟であり、諸制度は明(みん)朝のそれを踏襲した。そのため、制度に習熟した漢人を官僚に任用する必要があった。また、全中国の皇帝という立場からは、満人と漢人の間に差別をつけないという政治的姿勢も必要であって、入関当初、主要官職はすべて満人が占めたが、やがて中央官庁の重要なポストの定員はすべて満、漢人を同数ずつとした。すなわち、内閣の内閣大学士は満、漢2名ずつと協弁大学士各1名ずつの計6名であり、六部(りくぶ)の各部の長官である尚書も満、漢1名であり、軍機処(ぐんきしょ)には定員がないものの、ほぼ同数が任用されている。後年、政治的、行政的に習熟した漢人勢力が伸長すると、満人官僚による漢人官僚の牽制という目的もあった。光緒(こうちょ)帝(在位1874~1908)末年になって、人材を広く登用する方法の採用で、中止となった。
[細谷良夫]