漢人(読み)アヤヒト

デジタル大辞泉 「漢人」の意味・読み・例文・類語

あや‐ひと【漢人】

古代中国から渡来したといわれる人。また、その子孫多く大陸学芸技術をもって朝廷に仕え、東漢氏やまとのあやうじの下で漢部あやべ管理者となった。村主すぐりかばねをもつ。あや

かん‐じん【漢人】

漢民族漢族
中国人。

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精選版 日本国語大辞典 「漢人」の意味・読み・例文・類語

あや‐ひと【漢人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 大化前代、大陸系渡来人の一系統。漢氏(あやうじ)の部下となり、支配下の品部(ともべ)である漢部(あやべ)を監督した者の称。その姓(かばね)村主(すくり)が多い。元来は五世紀初頭に朝鮮から来た技術民がこう呼ばれたが、のち中国系と称する渡来人を意味するようになった。→東漢氏(やまとのあやうじ)漢部(あやべ)
    1. [初出の実例]「今の桑原、佐糜、高宮、忍海、凡て四の邑の漢氏(アヤヒト)等が始祖なり」(出典:日本書紀(720)神功摂政五年三月(熱田本訓))
  3. (かばね)に準ずる呼称。中国系の渡来人の系統であることを意味する。
    1. [初出の実例]「唐国に遣(つかは)学生(ふむやわらは)(やまとの)(あやの)(あたい)福因(ふくいん)〈略〉高向(たかむこの)漢人(あやひと)玄理(けんり)、新(いまきの)漢人(アヤヒト)大国」(出典:日本書紀(720)推古一六年九月(岩崎本室町時代訓))

かん‐じん【漢人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中国本土在来の種族。中国人。広く、中国本土の人。漢民族。漢族。
    1. [初出の実例]「礼、或は漢人の手に成るも」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)篦頭舗)
    2. 「広沢をして日本の能書ならしめば、われは則ち漢人(カンジン)の拙なるものと云ふたのは」(出典:草枕(1906)〈夏目漱石〉八)
  3. 中国系と称する渡来人。あやひと。
    1. [初出の実例]「漢人来朝」(出典:扶桑略記(12C初)応神二〇年)

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「漢人」の解説

漢人(かんじん)

一般には漢族のこと。元初においては旧朝治下の人々の総称であり,契丹(きったん)人,女真(じょしん)人,渤海(ぼっかい)人,高麗(こうらい)人および淮河(わいが)以北の中国人などが該当する。従来,元朝治下の身分制度としてモンゴル人色目(しきもく)人,漢人,南人(旧南宋治下の人々)という4階級が厳として存在してきたとされるが,再検討を要する。つまり人種宗教などの枠をこえて,個々の人間の実力主義の状況が生まれていた。また清代では満人との対比で用いられることがある。

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旺文社世界史事典 三訂版 「漢人」の解説

漢人
かんじん

元代,もと金の支配下にあった,中国人・契丹人・女真人・高麗人・渤海人などをさす
元朝の支配体制において,モンゴル人・色目人に次ぐ位置で,南宋支配にあった南人よりは上とされた。

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世界大百科事典(旧版)内の漢人の言及

【新漢人】より

…〈いまき〉は新参の意で今来とも書く。古代に中国系と称して渡来した人々は一般に漢人(あやひと)と呼ばれたが,そのほとんどが朝鮮半島に居住していたものだった。その中で5世紀後半のころまでのものはおもに漢・魏を源流とする古い楽浪文化を伝え,大陸の学芸・技術をもって朝廷に仕える各種の専門職の小氏となり,その多くは雄略朝のころに東漢(やまとのあや)氏を伴造(とものみやつこ)とする一つの指揮系統の下に組織化された。…

【東漢氏】より

… 《日本書紀》《新撰姓氏録》さらに《続日本紀》の坂上苅田麻呂の上表文などによると,応神天皇のとき,後漢霊帝の3世孫阿知使主(あちのおみ)が〈党類十七県〉をひきい来日し,さらに子の都加使主(つかのおみ)を呉に遣わし,工女兄媛,弟媛,呉織,穴織の4婦女を連れてかえったというが,これは雄略天皇のとき倭漢氏の一族が呉に使し,〈手末才伎(たなすえのてひと)〉の衣縫兄媛,弟媛,漢織,呉織を連れかえったとする説話と共通する。また阿知使主が,彼の旧居(帯方郡の故地,高句麗と百済の間)には才芸に巧みなものが多いので迎えたいと申請し,村落をあげ連れかえったのが〈漢人(あやひと)〉であるとの説話がある。これも雄略天皇のときとする次の話と同工異曲である。…

【漢民族】より

…漢民族と一般に通称されている民族とはいったいどんなものなのであろうか。彼らが漢族とも漢人とも呼ばれていることは周知のことである。かつて李済は《漢民族の形成》という著書を著しているが,まさに漢民族と汎称される民族の構成はきわめて煩雑であり,その言葉の持つ意味のとらえ方も多様である。…

※「漢人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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