瀬取り(読み)セドリ

デジタル大辞泉 「瀬取り」の意味・読み・例文・類語

せ‐どり【瀬取り】

船から船へ積み荷を移すこと。特に、陸揚げのために、親船の積み荷を小船に移すことや、その小船をいう。

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共同通信ニュース用語解説 「瀬取り」の解説

瀬取り

船舶に積んだ違法薬物などを沖合海上浮具をつけて落とし、別の船が拾い上げて取引する密輸手口。捜査当局に発見される可能性が低く、警戒の厳しい空港や港湾に直接密輸する方法よりも発覚リスクが少ないとされる。荷揚げの際は、監視が手薄な場所が狙われることが多いという。最近は荷物の正確な位置を把握するため、衛星利用測位システム(GPS)を使うなどハイテク化が進んでいる。

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知恵蔵 「瀬取り」の解説

瀬取り

船舶を岸壁桟橋接岸させず、積み荷を海上で小型の舟艇などに積み替えること。瀬で荷を移し取ることから「瀬取り」という。国際問題としての瀬取りは、国連安全保障理事会北朝鮮への経済制裁として、輸入の上限を定めた石油精製品を密輸する手段として、公海上などで積み荷を移し替えていることを指す。どこで積み荷を受け渡そうとも制裁決議に反する行為であり、日米などがこれを非難している。なお、古本などの売買を仲介して稼ぐ手法を同音で「せどり」と称するが、「競取・糶取」などとつづる別の用語であって、瀬取りとは無関係である。
近代以前の廻船(かいせん)業では、大型船が入港し着岸するための港湾設備が十分ではなかった。このため、当時の大型船で海の航路を運び、沖合に停泊した大型船から積み荷を艀(はしけ)などの小型船に積み替える荷役作業を行って積み荷を陸揚げし、河川の航路を小型船で内陸まで運搬するといった輸送方式をとっていた。現在では大型の船舶も接岸可能な施設が充実してきたことや、トラックなどによる陸上輸送網が発達したことから、瀬取りは少なくなってきている。ただし、離島など設備が不十分だったり浚渫(しゅんせつ)が困難だったりする場所では現在も行われる。また、原油や液化天然ガスの輸送では、効率向上のために非常に巨大なタンカーが使われることがあり、港湾設備が追い付かない場所での荷役を中小型のタンカーを介して行うこともある。また、大量の覚醒剤や銃器などを密輸する手口として違法な瀬取りが行われることもある。
北朝鮮による瀬取りは、2006年に初めて同国が行った核実験に端を発する。国連安全保障理事会は、これ以上の核実験と弾道ミサイルの開発を行わないよう同国に対して求めると共に、国連憲章第7章に定める平和に対する脅威として経済制裁を決議した。その後も核実験やミサイル開発は止まらず、北朝鮮からの石炭輸出や北朝鮮への石油精製品の輸入規制など経済制裁は強化された。この結果、制裁に違反した北朝鮮の船舶は、資産凍結や入港禁止の対象に指定されて禁制品の運び出しが困難になり、他国の船も制裁対象の禁制品を同国の港に運び込むことができなくなった。そのため、北朝鮮の船舶に対して公海など洋上で受け渡す瀬取りが横行するようになった。日本や米国は、北朝鮮の違法な瀬取りについて情報を共有すると共に、その実態を国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会に通報しているが、継続して繰り返され常態化しているとされる。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

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