各漁村の地先漁場の外側に隣接した海域をいう。近世に入ると,各海村は,村限りの前浜を占取し,ここを自村の独占的漁場として用益するようになり,この伝統は,明治時代に入ってからも,また現在に至ってもなお基本的に受け継がれている。これに対し,沖合は,数村入会あるいは勝手次第の漁場として,地先漁場とは異なった存在であった。日本の場合,船の航法は,近代に入るまで,長くヤマアテあるいはヤマダシなどと呼ばれる陸の山や岬を目じるしとして位置を確定する方法が用いられていたため,沖合といえども,ヤマアテが可能な範囲での距離内に限定され,陸影海没地点から先のヤマナシの海へ沖合漁場が拡大されるようになるのは,ずっと以後のことになる。沖合での伝統的漁業としては,太平洋側に広範にみられるカツオの一本釣漁などが代表的なものであろう。漁業の上では,沿岸(地先)漁業に対し沖合漁業という慣習的用語があるが,両者を区分する厳密な基準はない。
執筆者:高桑 守史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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