火鑽臼(読み)ひきりうす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「火鑽臼」の意味・わかりやすい解説

火鑽臼
ひきりうす

発火具。木と木を摩擦して火をおこすことは、人類の発見した古い発火法である。わが国には揉鑽(もみきり)法と舞鑽(まいきり)法とがあって古い神社などに伝承している。両者ともに臼といわれる木板の上に棒(杵(きね))を立てて回転摩擦することによって火を鑽(き)り出すのであるが、前者が両手で強く揉(も)み出すのに対して、後者は棒の回転にはずみ車を利用した進歩した発火法である。揉鑽法を示す火鑽臼や火鑽杵は、弥生(やよい)時代以降の遺跡から発見されており、出雲(いずも)大社や信州遠山(とおやま)の霜月(しもつき)祭などでは今日でも使用されている。舞鑽法による発火は伊勢(いせ)神宮や熱田(あつた)神宮などの神事に行われるが、この進んだ発火法は、伊勢神宮でも18世紀後半ごろ採用された模様である。

木下 忠]

『高嶋幸男著『火の道具』(1985・柏書房)』『文化庁文化財保護部編『火鑽習俗』(1981・国土地理協会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 道具

今日のキーワード

イチロー

[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...

イチローの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android