鑽火(読み)きりび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鑽火」の意味・わかりやすい解説

鑽火
きりび

古代から行われた発火法の一つ。火鑽杵(ひきりぎね)とよばれる棒状木材を、火鑽臼(うす)というくぼみのつけられた木材に押し付けて回転させ、摩擦することにより発火させるもの。とくに神聖な火、神事に使用する火を得る方法として、今日も神社などで行われる。火鑽臼にはヒノキ材、火鑽杵にはヤマビワ材を使用するのがよいとされる。火鑽杵を回転させる方法としては、手のひらにより錐揉(きりも)みするもの、横木につけた縄を火鑽杵に巻き付け、横木を上下に動かしながら杵を回転させるものなどがある。伊勢(いせ)神宮では、忌火屋(いびや)殿において、外宮(げくう)では毎日、内宮(ないくう)では祭りのたびごとに忌み火をきり出し、神前に供える御食(みけ)を炊(かし)ぐ。また出雲(いずも)大社では、国造(くにのみやつこ)の職を継承するにあたり、新国造が神火をきり出して厳重な儀式が行われ、神火相続とよばれる。なお、火打石と火打鉄(かね)を打ち合わせ、火花を打ちかけて清め祓(はら)いとする切り火も簡略な方法として広く行われる。

[佐野和史]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「鑽火」の読み・字形・画数・意味

【鑽火】さんか(くわ)

火を切り出す。〔史記、孫子伝〕乃ち大樹を斫(き)り、白くして之れに書して曰く、涓(はうけん)此の樹下に死せんと。~涓果して夜、斫木(しやくぼく)の下に至り、白書を見、乃ち火を鑽りて之れを燭(て)らす。

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