尾張国(愛知県)愛知郡にある熱田神宮の門前町で,鎌倉時代以来の海陸交通の要地。宮,蓬萊島ともいう。名古屋台の先端熱田台の南に位置し,東は神領田がつづき,西に堀川が南北に流れる。南は海浜,北は名古屋の古渡に接する。玉ノ井遺跡,高蔵貝塚,断夫山古墳,白鳥古墳と考古遺跡に富む。《和名抄》の愛智10郷のうち厚田・神戸郷にあたり,歴史は古い。しかし都市の形態がととのうのは永禄(1558-70)ごろ,とくに東海道宮宿が置かれ,背後に尾張徳川氏の城下町名古屋が形成された江戸時代初頭である。市域は元禄(1688-1704)の調査で南北27町29間余,東西6町40間余。別に東脇,大瀬子,須賀の三ヵ浦がある。名古屋城下から南へ,新尾頭町(1664開発)で熱田に入り,熱田神宮の西をかすめて海岸に出る幹線道路ぞいに新旗屋町,古旗屋町,馬場町,中瀬町,ほかに市場町,神戸町,伝馬町などがあり,35ヵ町からなる。戸口は元禄度町方1798軒8734人,三ヵ浦736軒3762人,社人232軒1101人,社家支配106軒402人。1840年(天保11)には町方だけで人口1万1957人。神領は高4240石。熱田奉行が城下に準じて管轄した。歴代奉行中1791年(寛政3)就任の津金文左衛門は著名。役所は西浜御殿に隣接。藩領木曾山から流送の材木を管理・保管する白鳥材木役所・材木場,船奉行役所や船番所も所在。浜には伊勢国桑名にいたる七里渡の船着場があり,1625年(寛永2)航海の安全のため常夜灯が築かれた。脇往還佐屋路は宮宿で東海道より分岐,陸路桑名宿へ至る。宿場には赤・白・脇本陣をはじめ旅籠屋,朱印改役所,人足伝馬問屋が並び,にぎわう。岡本儀兵衛,深田清左衛門ら富家も多い。由緒のある木之免(きのめ)・大瀬子の魚市場は近海遠国の魚介類を集散して活況を呈した。維新後名古屋とともに愛知県第一大区,1878年分離,愛知郡役所設置。86年武豊との間に鉄道開通。1907年名古屋市編入。現,熱田区。
執筆者:林 董一
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名古屋市南部の地区。熱田台地南端の熱田神宮の門前町神宮(じんぐう)地区は、中世以来清洲(きよす)と並ぶ商業町で、1601年(慶長6)の駅制で東海道五十三次の宮宿(みやのしゅく)としてますます繁盛した。宿場は伝馬(てんま)町、神戸(ごうど)町辺、「七里の渡(わたし)」といわれる渡船場から、桑名(くわな)へは海路の船旅であった。美濃(みの)街道、佐屋(さや)街道の分岐点でもあり、海路を嫌う者は佐屋街道によった。神戸の浜の周辺には、舟番所、熱田奉行(ぶぎょう)所などや、問屋場4、本陣、脇(わき)本陣各2、旅籠(はたご)屋248軒(1843)が並び、にぎわった。現在の神戸町の常夜灯は復原されたもので、寛永(かんえい)年間(1624~1644)には須賀浦(すがうら)にあった。熱田前新田は、尾張(おわり)9代藩主宗睦(むねちか)時代、熱田奉行津金胤臣(つかねたねおみ)の提案による藩営新田で、現在は大部分が臨海工業地帯と化している。愛知郡熱田町は、1907年(明治40)に名古屋市に編入され、1908年には南区、1937年(昭和12)には熱田区の一部となった。広大な社叢(しゃそう)につつまれる熱田神宮は、伊勢(いせ)神宮に次ぐ由緒ある大宮で、年間参拝客900万余を数える。
また、JR東海道本線熱田駅および名古屋鉄道神宮前駅周辺の商店街は、名古屋市の繁華街の一つに発展している。地下鉄名城線も通じている。
[伊藤郷平]
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…面積の約6割が濃尾平野の南半部にあたる肥沃な沖積平野で,古墳の分布などから推察すれば,北部の犬山市や一宮市,北東部の春日井市あたりにも豪族の拠点があったと考えられる。しかし国全体を統轄する地位を確保したのは,平野南部の熱田台地に本拠をおく尾張国造たる尾張氏であろう。尾張氏は,ヤマトタケル伝説を媒介として,皇室とのつながりを誇示する豪族であった。…
…桑名渡,熱田渡,間遠渡ともいう。徳川家康が1601年(慶長6)に東海道を制定したとき,尾張国宮(熱田)宿と伊勢国桑名宿の間は海上を七里渡と決め,これを官道とした。…
※「熱田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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