無医地区(読み)むいちく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「無医地区」の意味・わかりやすい解説

無医地区
むいちく

医療機関のない地域。厚生労働省が定めた「へき地保健医療対策等実施要綱(平成30年3月改正)」によると、無医地区とは、「医療機関のない地域で、当該地区の中心的な場所を起点としておおむね半径4キロメートルの区域内に50人以上が居住している地区であって、かつ容易に医療機関を利用することができない地区」とされている。

 無医地区の数は2014年(平成26)10月末の時点で637地区であり、2009年の705地区と比較し約10%減少している(平成26年度無医地区等調査)。都道府県別の状況をみると、多い順に北海道、広島県、高知県となっている。無医地区となる要因については、医師確保が困難であること、地理的条件、交通事情等により住民が医療機関を利用することが困難であること等が考えられている。

 また、無医地区ではないが、これに準じて医療の確保が必要であると都道府県知事が判断し、厚生労働大臣と協議した地区であって、同大臣が適当と認めたものは「準無医地区」とされている。

 無医地区および準無医地区は、国が行う「へき地保健医療対策事業」の対象地域とされている。この事業は、僻地(へきち)における医療水準の向上を目的とするものであり、1956年度(昭和31)以降、計画期間を5年間とする「へき地保健医療計画」が策定され、「へき地診療所」における住民への医療の提供、「へき地医療拠点病院」等による巡回診療や代診医派遣、緊急時の輸送手段の確保や遠隔医療の導入、「へき地医療支援機構」の設置等、各種の施策が実施されてきた。

 第11次へき地保健医療計画(平成23~27年)までは、独自に策定されてきたが、平成30年度からは「医療計画」に統合され、そのなかで5疾病5事業の一つとして一体的に検討を行うこととなった。「へき地保健医療対策検討会報告書(平成27年3月)」には、「地域医療支援センター」と「へき地医療支援機構」における医師のキャリア形成支援、「へき地医療拠点病院」の実績要件の検討などの意見がまとめられており、へき地・離島の住民への医療提供体制の充実が期待されている。

[前田幸宏 2020年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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