遠隔医療(読み)エンカクイリョウ

デジタル大辞泉 「遠隔医療」の意味・読み・例文・類語

えんかく‐いりょう〔ヱンカクイレウ〕【遠隔医療】

医師と医師、医師と患者との間をインターネットなどでつなぎ、患者情報を伝送して、診断指示などの医療行為及び医療に関連した行為を行うこと。

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百科事典マイペディア 「遠隔医療」の意味・わかりやすい解説

遠隔医療【えんかくいりょう】

テレビ電話,コンピューター通信衛星などを活用して,遠隔地を結んで行う医療のこと。遠隔医療の目的は大きくわけて,(1)僻地(へきち)や離島海上など,近くに病院がない住民のために,通院の困難さを解消して先端医療を受けられるようにする,(2)離れている医療機関をコンピューターで結び,必要に応じて画像やカルテなどの情報を交換する,(3)地方にいる医師への医学教育を行う――の3つに分けられる。 このうち,(1)は北海道,長野,長崎・対馬などで実施されており,たとえばテレビ電話で医師が画像を通じて患者の状況を把握し,必要な処置を指示する。こうした診察方法はかつて医師法で認められていなかったが,1997年末に厚生省の通達で認定され,1998年4月には患者からの要請によって,再診や緊急時という条件で健康保険が認められた。 (2)は病理診断細胞診バイオプシーなど),X線,CTスキャンMRIなどの画像やカルテを電算化して,コンピューターを通じて遠くの病院にも送信できるシステム。これによって,癌(がん)検診の結果などを多くの医師が同時に見て検討することができる。国立がんセンターでは中央病院(東京・築地)と東病院(千葉県柏市)で病理診断の画像データのやりとりをしている。さらに,電子メールによって患者の紹介状を出したり,カルテを送信することで,すばやく転院の処理をすることも可能である。 (3)では通信衛星を使った医療教育専門チャンネルが稼動しており,内科開業医向け〈MyTV医療チャンネル〉,医療関係者向け〈メディカル・ヴィジョン〉,歯科専門の〈Dチャンネル〉などがある。また,郵政省(現日本郵政公社)と宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)では技術試験衛星ETS-Vでアジア太平洋諸国と日本を結んだ〈アジア・太平洋衛星医療ネットワーク〉を進めている。
→関連項目電子カルテ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遠隔医療」の意味・わかりやすい解説

遠隔医療
えんかくいりょう

日本遠隔医療学会の定義によると、遠隔医療(Telemedicine and Telecare)とは、「通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為」をいう。実験的取組みを推進する研究班が厚生労働省に組織された当初は、遠隔医療情報システムなどとよばれ、「映像を含む患者情報の伝送に基づいて遠隔地から診断、指示などの医療行為および医療に関連した行為を行うこと」と定義されていた。すなわち、古くは映像などの情報の伝送技術を活用して遠隔地から行う医療行為を意味していたが、現在は通常の医療行為のほかに、保健・福祉や介護領域および健康情報全般にまでその対象が広がり、地域医療ネットワークの構築なども視野に入れられている。

 また同学会では2011年(平成23)に、高齢者の独居化が進むなかで在宅医療を担う医師が不足している現状をふまえ、「在宅等への遠隔診療を実施するにあたっての指針」を作成し公表している。遠隔診療とは、「在宅等にある患者を医師が遠方から通信と音声映像機器を用いて、リアルタイムな双方向性を確立した上で診療すること」と定義されている。離れた2地点間で行われる双方向性をもった遠隔診療により、患者側から送信される健康情報をもとに離れたところからの問診や視診などの診療も可能となり、地域がかかえる在宅医療問題の解決にもつながると期待される。

[編集部 2017年3月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遠隔医療」の意味・わかりやすい解説

遠隔医療
えんかくいりょう
telemedicine

山間部,離島,積雪地帯のように交通の不便な地域に住む住民と医療機関との間に連絡通信網を設置,各種の医用電子機器を利用して住民の生体情報 (心電図,X線写真,音声など) を病院などに伝送,医師の診察,問診などを受け,その診断に基づいた治療の指示を病院側から患者側に逆に伝送して診療を行なう医療。このためには電話,有・無線テレビ,テレビ電話,ファクシミリなどの音,画像,情報伝達装置が有力な武器となる。住民側についている看護師保健師などが専門医の指示によって患者の医療処置にあたることになる。定期的な医師の直接診察,緊急の場合の医師または患者の搬送体制なども必要とされる。

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知恵蔵 「遠隔医療」の解説

遠隔医療

コンピューター・ネットワークを利用して、互いに離れている医療機関同士で医療情報のやりとりをし、診療に役立てるシステム。専門医のそろっていない病院などから、X線画像、病理標本などが専門医のいる病院に送られ、その専門医が診断をするという試みが行われている。さらに進めば、多様な医療情報が送受信されることになり、医療の方法自体に大きな変化が起きるものと予測される。また将来的には、患者宅と医療機関をつないだ遠隔診療も実現するものと考えられる。ロボット手術を、遠隔医療の1つとして行う試みもある。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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