無年金(読み)ムネンキン

デジタル大辞泉 「無年金」の意味・読み・例文・類語

む‐ねんきん【無年金】

70歳まで年金保険料を納付しても、受給要件を満たさないため、年金を受け取れないこと。→低年金

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無年金」の意味・わかりやすい解説

無年金
むねんきん

一般に、公的年金を受けられない状態をいう。税方式を採用している国では、国内居住期間の要件を満たさない場合や、所得制限を設けている場合に無年金が発生する。一方、社会保険方式を採用している国では、無業者・低所得者などで制度の適用を受けなかった場合や、受給資格期間の要件を満たさない場合に無年金が発生するが、皆年金体制にある日本では、基本的に後者の原因による。そのおもな原因として、老齢年金の受給資格期間が25年で、おおむね10年以内である欧米諸国に比べて長いことが指摘されていた。そこで、2012年(平成24)の年金改正では、納付した保険料に応じた給付を行い、将来の無年金者の発生を抑えるという観点から、受給資格期間を10年に短縮し、消費税率10%への引上げにあわせて施行することとした。しかし、消費税率の引上げが延期されるなかで、2016年改正により、消費税率の引上げとは切り離し、2017年8月から施行した。これにより救済される可能性のある者は約64万人と推計されている。

 この改正に問題がないわけではない。現行制度では、少なくとも20歳から60歳までの40年間の保険料納付義務が課され、納付が困難な者には、保険料免除、学生納付特例、納付猶予の制度が設けられている。無業者・低所得者などは適用除外または任意加入とされている諸外国とは事情が違い、受給資格期間を短縮すれば保険料納付意欲が低下し、未納問題がいっそう深刻になり、納付期間の短い低額年金を増やすおそれがある。このような問題の発生を防ぐには、自営業者等の国民年金第1号被保険者の加入促進が必要である。具体的な取組みとして、若者に対する年金教育の推進、きめ細かい広報や納めやすい納付環境の整備、納付困難な者に対する保険料免除等の申請勧奨、保険料の負担能力がありながら長期間滞納している者についての滞納処分の実施などが行われている。

[山崎泰彦 2017年8月21日]

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