然有(読み)さり

精選版 日本国語大辞典 「然有」の意味・読み・例文・類語

さ・り【然有】

〘自ラ変〙 (副詞「さ」にラ変動詞「あり」の付いた「さあり」が変化した語)
① そのようである。そうである。そのとおりである。
※竹取(9C末‐10C初)「さるわざする舟もなし」
※読本・昔話稲妻表紙(1806)一「組子等(くみこども)げにもさりと思ひ、我先とあらそひ飛かからんとしたる所に」
② (「さるべし」の意) しかるべきである。相当である。ちゃんとしている。
源氏(1001‐14頃)藤袴「わざと、さる筋の御宮仕へにもあらぬものから」
※俳諧・幻住菴記(1690頃)「すべて山居といひ旅寝と云、さる器たくはふべくもなし」
[語誌]「さり」は、上の語句を受けて、指示する内容がそれと同等である、またそれに相当する、あるいは、指示する内容が道理として承認できるの意を表わす。その点、「しかり」ときわめて近い意義用法を持っている。ただ、「さり」は和文脈に、「しかり」は漢文訓読文脈に、それぞれ用いられることが多く、用法の上で対照的である。また、「さり」は、単独で用いられるよりも、「さらば・さらずは・さりけり・さりぬべし・さりながら・さりとて・さる(連体詞)・さるまじき・さるほどに・されば・されど」など、転成語ないし慣用句として用いられることが多い。

さる【然有】

連体〙 (動詞「さり(然有)」の連体形から) (特にその名前事柄を明らかにする必要のない場合、あるいは、はばかる場合などに多く用いる) ある。某。
謡曲昭君(1435頃)「さる子細ありて胡国の夷(えびす)に送られ給ひて候」
日葡辞書(1603‐04)「Saru fito(サルヒト)〈訳〉ある人」

しかる【然有】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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