日本大百科全書(ニッポニカ) 「焼き石膏」の意味・わかりやすい解説
焼き石膏
やきせっこう
calcined gypsum
硫酸カルシウム二水和物(二水石膏)の乾式焼成によって得られる2分の1水和物(半水石膏)CaSO4・1/2H2Oのこと。煆焼(かしょう)石膏、プラスターなどともいわれる。古代から美術、建築に使われ、18世紀末以来工業生産されている。日本では明治末期から陶磁器業界で用いられるようになった。二水石膏を粉砕して平釜(ひらがま)に入れ、150~200℃で2~4時間煆焼したのち、大気中熟成によって水分を吸収させてつくる。水を加えて練ると、もとの二水和物に戻り硬化する。このとき体積の膨張を伴う。半水石膏にはα(アルファ)型とβ(ベータ)型が知られており、いわゆる焼き石膏ではβ型に多少のα型が混合している。結晶が微細で、適当な粘度に練り上げるのに多量の水を必要とし、そのため硬化物の強度が低い。なお、二水石膏を加圧釜の中で湿式加熱、すなわち水蒸気と水を加えて加熱すると、α型の半水石膏が得られる。結晶がよく発達し、少量の水ですむので強度が大きくなる。いわゆる焼き石膏(β-半水石膏主体)は石膏プラスター、石膏ボード、陶磁器用型材に、また、α-半水石膏を多く含むものは、金属工業用鋳型材、医療用などに用いられる。
[鳥居泰男]