工業的加熱操作の一つ。固体原料を加熱し,熱分解により揮発性成分を脱出させ,安定な生成物を取得する処理をいう。加熱温度は固体が融解しない範囲である。原料組成は多くの場合,水酸化物,水和物,炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩,有機酸塩などであり,煆焼により,固体酸化物と揮発分(ガス)が得られる。煆焼反応を一般的に示すと,S(A)-→S(B)+G(C)(Sは固体,Gは気体,(A),(B),……は物質の種類)となる。代表的な煆焼反応は石灰石の熱分解CaCO3─→CaO+CO2である。揮発成分中の一部のみの脱出にとどめる場合(たとえば,焼セッコウ製造反応CaSO4・2H2O─→CaSO4・1/2H2O+3/2H2O)もある。また煆焼処理において,揮発成分脱出を伴わずに,固体の物理的・化学的性質の改質(結晶性発達など)を目ざすこともある。たとえばマグネシアクリンカー製造などがこれに当たる。この場合は化学組成の変化はない。これらを併せ考えれば,より広義の意味での煆焼となる。
英語表現では同じである〈焼成〉は,S(D)+S(E)-→S(F)のように,固相間反応による高温固相合成を意味することが多い。さらに〈焙焼(ばいしよう)〉は,S(A)+G(B)-→S(C)+G(D),具体例としては[MS]+O2─→[MO]+SO2(Mは金属元素),のような固相-気相置換分解反応を目的とし,煆焼と若干意味を異にする。しかし両者を厳密に区別しないで使われることも多い。また化学分析操作で揮発成分を定量する場合,煆焼と同じ目的の加熱処理を行うが,この場合は〈強熱ignition〉といい,吸着化学分野においては〈昇温脱離ignition loss〉と呼んでいる。これらの場合は製造工業的意味をもたない。
執筆者:金澤 孝文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…温度が大きく変わる場合を除けば,相対湿度(関係湿度)のみによってほぼその値が決まる(図3)。
[その他の乾燥]
結晶性塩類を高温で焼いて結晶水を除く操作を煆焼(かしよう)という。気体の乾燥を脱湿または減湿という。…
※「煆焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加