プラスター(読み)ぷらすたー(英語表記)plaster

翻訳|plaster

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラスター」の意味・わかりやすい解説

プラスター
ぷらすたー
plaster

塗壁用材料で、石膏(せっこう)プラスタードロマイトプラスターとに大別される。そのほか石灰プラスターもあるが、これは漆食(しっくい)とよばれている。石膏プラスターはプラスターの代表的なもので、これを単にプラスターとよぶことも多い。

 石膏自体は石灰と同様にもっとも古い建築材料の一つで、紀元前2000年エジプトピラミッド石材の目地、棺の装飾に用いられていて、そのころからすでにプラスターとしての使い方がなされていた。ヨーロッパには良質の天然石膏が多量に産出するために、建材としての地位も高く、とくに都市における大火災に際して防火価値が認められ、建材としては一般化した材料である。Plaster of Parisは焼石膏を意味し、パリでつくられた石膏プラスターが語源となっている。日本においては明治以後に輸入され使用されたが、建材の中心にはならなかった。戦後占領軍の施設への使用により国内製造が始まり、年間約40万トンが生産されていたが、その後、生産量は減少し、1985年(昭和60)には18万6000トン、さらに2004年(平成16)には3万トンにまで減少している。

 石膏プラスターは、それに用いられる原料によって、さらに数種類に分けられる。もっとも一般的な石膏プラスターは焼石膏CaSO4・1/2H2Oを主原料とするが、硬石膏CaSO4(無水石膏)、硬質石膏α-CaSO4・1/2H2Oを単味あるいは混合したプラスターもある。石膏プラスターの原料となる石膏は、国内に良質な天然品はなく、もっぱら化学工業からの副産石膏、排煙脱硫石膏、輸入天然石膏などである。焼石膏は、これら原料石膏CaSO4・2H2O(二水石膏)を160~200℃に焼いてつくる。また500~900℃で焼くと無水石膏となる。一方100℃以上の熱水中において硬質石膏ができる。現在、日本工業規格(JIS(ジス))に規定されている石膏プラスターは、建築現場で骨材を調合し水と練り合わせて使用する現場調合プラスターと、あらかじめ骨材、混和材料等が混入されており、水を加えるだけで使用できる既調合プラスターの2種類である。石膏プラスターは収縮ひび割れが生じにくく、硬化が早く、仕上がりがきれいであるのが特徴である。

 ドロマイトプラスターは、ドロマイトやドロマイト質石灰石を焼成して含有する炭酸ガスを放出し、軽焼ドロマイトをつくり、これを水で消化(水和)したもので、可塑性が大きく、糊剤(のりざい)を使用する必要がない。仕上がり面は石膏プラスターに劣るが、塗りやすく割安である。

 なお、製陶用プラスターや歯科用プラスター、さらには、石膏のセルフレベリング性(自己水平性)を利用した床用プラスターなどの場合には、プラスターの語は焼石膏あるいは石膏組成物の意味で使われている。

[工藤矩弘]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラスター」の意味・わかりやすい解説

プラスター
plaster

石灰または石膏を主材料とした塗装材料。石膏プラスターとドロマイト・プラスターがあり,建築の壁面塗装や彫塑的装飾物をつくるときに用いられる。最も古い建築技術の一つで,エジプトのピラミッド,ギリシアの建築などにも用いられた。室内の装飾に用いられるものは金属製のこてで仕上げられ,あらかじめ鋳型でつくられたものをつけることもある。外壁には,コンクリート煉瓦の上に直接,または下地に金属製のラスを使って塗る。

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