日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱方程式」の意味・わかりやすい解説
熱方程式
ねつほうていしき
二階線形放物型偏微分方程式
を熱方程式といい、均一な等方性媒質の熱伝導や粒子の拡散を記述する方程式として現れる。簡単のため空間一次元の場合の方程式
を考える。閉領域0≦t≦T,0≦x≦Lで連続な関数u(t,x)が0<t≦T,0<x<Lで方程式(1)を満たすとき、その最大値、最小値は初期時刻t=0かまたは境界x=0,L上でとられる(最大値の原理)。このことから、たとえば境界条件u(t,0)=u(t,L)=0と初期条件u(0,x)=f(x)を満たす(1)の解はただ一つであることがわかる。ただし、f(x)は0≦x≦Lで連続で、両立条件f(0)=f(L)=0を満たすとする。さらにf(x)が0≦x≦Lで連続的微分可能ならば、この混合問題の解は変数分数形の解を重ね合わせて
で与えられる。
この解は0<x<L,t>0で無限回微分可能で、一様収束の意味で初期関数f(x)に連続的に依存する。f(x)が-∞<x<∞で有界な連続関数のとき、初期条件u(0,x)=f(x)を満たす(1)のt>0,-∞<x<∞で有界な解はただ一つ存在して
で与えられる。ただし初期条件は有界なxについて一様にu(t,x)→f(x)(t→0)であるという意味で満たされる。この解もt>0,-∞<x<∞で無限回微分可能で、一様収束の意味で初期関数に連続的に依存する。空間多次元の場合も同様の事柄が成り立つ。
[小林良和]