物語僧(読み)ものがたりそう

改訂新版 世界大百科事典 「物語僧」の意味・わかりやすい解説

物語僧 (ものがたりそう)

中世(とくに室町期)において物語を語ることを業とした目明きの遁世者。伴奏楽器はなく,扇を持って朗々とした語り口調で軍記物語などを朗誦した。《看聞(かんもん)日記》(1416年条)にみえる物語僧は〈弁説玉ヲ吐キ,言詞花ヲ散ラス〉という名人で,《明徳記》らしい軍記を語っている。《大塔物語》(室町初期)にみえる頓阿(とんあ)も〈弁説宏才〉で,物語は古山珠阿(しあ)の弟子という。珠阿は武士くずれの時衆で,義満の同朋衆である。《蔭涼軒(いんりようけん)日録》(1438年条)にも〈物語僧一峯〉の名がみえる。また同書(1466年条)には《太平記》を読誦する物語僧らしい人物も登場する。いずれも酒宴茶会余興に物語を語っており,連歌狂言(しゃれ,物真似)をもよくする座敷芸能者であった。《太平記》作者とされる小嶋法師も物語僧とする見方がある。絵解きと同類で,後の御伽衆(おとぎしゆう)や〈太平記読み〉は物語僧の流れをくむものである。
絵解き
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