特殊鋳鉄(読み)とくしゅちゅうてつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「特殊鋳鉄」の意味・わかりやすい解説

特殊鋳鉄
とくしゅちゅうてつ

普通鋳鉄に対して特殊元素を加えた鋳鉄。普通鋳鉄は炭素ケイ素マンガンのほかに不純物として少量のリン硫黄(いおう)を含むが、特殊な性質を与えるために他の合金元素を加えたり、普通合金元素の含有量を大幅に変えたりした鋳鉄である。たとえば14%ケイ素を含む耐酸鋳鉄、20%前後のニッケルを含む耐食・耐熱性ニレジスト鋳鉄、20%前後のクロムを含む耐摩耗性白(はく)鋳鉄、ニッケル4%、モリブデン1%を含む強靭(きょうじん)なベイナイト基地をもつアシキュラー鋳鉄などが有名である。

[井川克也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「特殊鋳鉄」の意味・わかりやすい解説

特殊鋳鉄
とくしゅちゅうてつ
special cast iron

普通鋳鉄 (単に鉄と黒鉛だけから成るもの) に特殊元素,たとえばニッケル,クロム,チタン,銅,マンガンなどを添加してその性能を高めたもの。合金鋳鉄ともいわれる。ただし鉄と炭素系のものでも,これに少量のマグネシウムを添加して黒鉛を球状化したものとか,あるいは特殊な熱処理を施して,その機械的強度を普通の鋳鉄より高めたものなども特殊鋳鉄の範囲に入れる場合が多い。

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世界大百科事典(旧版)内の特殊鋳鉄の言及

【鋳鉄・鋳鋼】より

…原料としては,鋼より一けた以上不純物の許容量が大きく,それだけに安価であり,かつ溶湯の粘性が低いので,たとえば家庭用だるまストーブのような比較的薄肉の鋳造品を簡単な設備で製作することが可能である。なお鋳鉄には,炭素量を2.0~2.5%に下げ冷却によって炭素をセメンタイトとして析出させ,その後微粉状の酸化鉄に包んで長時間900~1000℃前後で熱処理を施して脱炭させ,延性に富む材料にした可鍛鋳鉄,クロムを添加して耐熱性を付与した耐熱鋳鉄,ニッケルを添加して耐食性を改良した特殊鋳鉄がある。熱間圧延ロールにはニッケルを2%以上含むニッケルグレン鋳鉄,ニッケルチルド鋳鉄の特殊鋳鉄がよく用いられる。…

※「特殊鋳鉄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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