田村の草子(読み)たむらのそうし

改訂新版 世界大百科事典 「田村の草子」の意味・わかりやすい解説

田村の草子 (たむらのそうし)

御伽草子。〈とししげ〉将軍の子〈としすけ〉がますだが池の大蛇との間にもうけた利仁将軍は,陸奥国たか山の〈あくる王〉という鬼に妻を奪われたが,鞍馬の多聞天守護をこうむって〈あくる王〉を滅ぼし,妻をとり返す。その折,陸奥国はつせの郡田むらの郷の賤(しず)の女との間にもうけた子が長じて田村大将軍俊宗となる。俊宗は17歳のとき,大和国奈良坂山で,かなつぶてをうつ〈りやうせん〉という化生のものを退治し,さらに2年後には,伊勢国鈴鹿山の〈大だけ丸〉という鬼神を滅ぼすべしとの宣旨をこうむり,鈴鹿御前という天女を妻とし,その助けによって〈大だけ丸〉を退治する。田村大将軍は実は観音化身であった。利仁の名は《義経記》の冒頭に武勇の人としてみえる。同系の作に《鈴鹿の草子》があり,御国浄瑠璃奥浄瑠璃)には《田村三代記》もあって,悪路(あくろ)王を主人公とする長大な語り物の存在が推測される。伝本も多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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