デジタル大辞泉
「マス」の意味・読み・例文・類語
ます[助動]
[助動][ませ・ましょ|まし|ます|ます|(ますれ)|ませ・まし]動詞、助動詞「れる」「られる」「せる」「させる」の連用形に付く。
1 丁寧語として、聞き手に対する敬意を表す。「山登りに行って来ました」「何かお手伝いすることがありますか」「使いの者を伺わせます」→ませ
2 謙譲語として、動作の及ぶ相手に対する敬意を表す。
「其上馬には子細が御ざる、かたってきかせませう」〈虎明狂・牛馬〉
[補説]室町時代以降の語で、古くは未然形に「まさ」、終止・連体形に「まする」、命令形に「ませい」が用いられることもある。その成立については、「座す」「申す」「おはす」を起源とする説があるが、「まゐらす→まらする→まるする→まっする→まっす→ます」と変化したものを本流とみる説が有力である。仮定形「ますれ」はほとんど用いられず、代わって「ますなら」が多く使われる。命令形「ませ」「まし」は、「どうぞお入りくださいませ」「お早くお召し上がりくださいまし」のように、敬語動詞にしか付かない。「ます」を含んでいる文体を敬体とよび、常体の「だ・である体(調)」に対し、「です」とともに「です・ます体(調)」とよばれる。
マス(Mas)
インドネシア南部、バリ島中南部の村。ウブドの南郊に位置する。木彫の村として知られ、プマハットとよばれる木彫り職人が多く居住する。
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ます
- 〘 助動詞 〙 ( 活用は、現代語では「ませ(ましょ)・まし・ます・ます・(ますれ)・ませ(まし)」。終止形・連体形には、古くは「まする」を用いるなど、活用の仕方は時代によって相違がある。動詞、助動詞の連用形に付く。→語誌 )
- ① ( 謙譲語 ) 動作の及ぶ相手に対する敬意を表わす。…し申し上げる。…てさしあげる。
- [初出の実例]「馬にうちのせてつれまして行らうと云て咲ぞ」(出典:四河入海(17C前)二三)
- 「順慶町のおらん殿が、御血の道とやらで御目が眩(まい)ますと申て」(出典:浮世草子・風流曲三味線(1706)五)
- ② 聞き手に対する丁寧な気持を表わす。
- [初出の実例]「アリマ シュリ mǒximasuruua(マウシマスルワ) センジッタ ゴネンゴロノ ヲツカイ カタジケナウ ゴザル」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
- 「酒はあまりくさうて、のまれますまひ程に」(出典:虎明本狂言・河原太郎(室町末‐近世初))
ますの語誌
( 1 )「参(まい)らする」が「まらする」「まっする」または「まいする」などの形を経て変化したものであるが、活用形・意味用法などの上で、「申す」などの影響も受けているものと考えられる。
( 2 )近世初期においては、「まらする」の活用を受けて、「ませ・まし・ます(る)・まする・ますれ・ませい(ませ)」というサ変型活用であったが、近世中期以後、終止・連体形は次第に「ます」に代わるようになった。また、未然形に「まさ」、已然形(仮定形)に「ませ」という四段型活用の例もまれに現われている。
( 3 )現代語では、もっぱら②の意味で用いる。
( 4 )打消には、現代では「ません」がふつうであるが、近世には「ませなんだ」「ましない」もある。→ましない・ませなんだ・ません。
( 5 )命令形に当たる表現には「ませい」の形もあり、近世末期には、一種の尊大な命令として用いられた例がある。→ませい。
( 6 )命令形の「ませ」「まし」は、「あそばす」「ごろうじる」「なさる」「めしあがる」など、敬語の動詞に付いて尊敬表現に用いられるが、現代語では「いらっしゃる」「おっしゃる」「くださる」「なさる」の四語に付く場合に限られ、また、「まし」よりも「ませ」が共通語と感じられている。
( 7 )丁寧語「ます」は近世初期に一般化しはじめたと見られる。①の挙例「四河入海」、②の挙例「ロドリゲス日本大文典」は時期の早い例なので、誤脱などの疑いもかけられている。
マス
- 〘 名詞 〙 ( [英語] mass )[ 異表記 ] マッス
- ① あつまり。集団。かたまり。
- [初出の実例]「五分心のランプと、ちょろちょろと燃える木節の囲炉裡火とは、黒い大きな塊的(マッス)とよりこの男を照らさなかった」(出典:生れ出づる悩み(1918)〈有島武郎〉三)
- ② 多量。多数。
- ③ 大衆。民衆。
- [初出の実例]「マスを顧みず、できるだけむつかしい漢字を使ってみようとしたりする」(出典:鴎外と不俗(1951)〈桑原武夫〉)
- ④ =マッス①
マス
- 〘 名詞 〙 「マスターベーション」の略。〔模範新語通語大辞典(1919)〕
- [初出の実例]「マス掻きよったら女はいらんようになったか」(出典:階級(1967)〈井上光晴〉五)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
マス (鱒)
サケ目サケ科のサケ属,ニジマス属,イワナ属に属するマス類の総称。学術的には,サケ属のサクラマスOncorhynchus masouを指すが,一般的には,味の落ちる魚であるカラフトマスO.gorbuschaを指し,サクラマスはホンマスと呼ばれ区別して使われることが多い。マスと呼ばれる魚としては,このほかにヒメマス,ニジマス(一般に養殖されているマスは本種),カワマス,ビワマス,マスノスケ,クニマスなどがある。
サクラマスには降海型と湖沼型があり,さらに,河川型は,別名ヤマメと呼ばれている。ヤマメは,水温20℃以下の渓流にすみ,生涯パーマークparr markをもち,銀白色の体になることはなく,うろこもはがれにくい。また,背びれの先端部に黒色斑紋の現れることはない。産卵も数回行うことができるが,体長は最大でも30cmほどの大きさにとどまる。
サクラマスの降海型は,太平洋は利根川以北,日本海側では九州北部以北に分布するが,さらに南方で捕獲されることもある。体型はサケによく似た形をしているが,背びれ,腹びれに黒色斑紋のあること,体背部に黒点が散在すること,内臓の幽門垂の数がサケの約160個に比べ40~50個と少ないことで区別できる。
生後満3~4年で成熟し,サケと同じように産卵のため母川(ぼせん)へ回帰遡上(そじよう)する。遡上は水温が15~18℃ほどになる5月ころに始まる。このころはまだ生殖腺は未熟で,摂餌も活発に行っている。8~10月ころになると生殖腺も十分発達し,それと同時に絶食状態になる。また,体色も銀白色から茶褐色になり,体側に婚姻色として紫赤色を帯びた雲状斑紋が現れる。産卵場所は,清流の水深30~60cmの砂れき底に形成されることが多く,砂れき底に細長いすり鉢状の産卵床をつくり,産卵・放精後,雌が砂れきを上流から尾,体ではね上げて卵を覆う。産卵水温は11~15℃である。1腹の卵数は,魚体の大きさによって異なるが,1500~1万粒ほどである。しかし,一つの産卵床にある平均産着卵数は1300粒ほどである。卵径は6.2~7mmで,沈性球形卵。
孵化(ふか)日数は水温8℃で55日,10℃で40日を要し,孵化最適水温は7~11℃である。孵化後,しばらくそのまま砂れきの間に潜在している。その間に,臍囊(さいのう)を吸収して成長し,翌春の4月下旬から5月にかけて浮出してくる。このころには,体長は約30mmほどになっている。体色は灰褐色をなし,体側にパーマークが顕著に認められる。サケと異なりすぐには降海しないで,そのまま河川または湖沼にとどまり,7~8月ころには体長が8~9cmになる。冬には,湧水域あるいは深所に移行して越冬する。孵化後さらに1年経過した翌春3~6月に降海する。降海するころには体長は10~15cmに達する。また,体色も銀白色となり,パーマークが不明りょうとなり,うろこもはがれやすくなっている。しかし,なかにはもう1年とどまって降海するもの,産卵するまでそのまま湖沼に残るものがある。豊富な餌に恵まれた場合には,降海型と同様の成長をとげ,いわゆる湖沼型となり,その後1年を経て産卵に参加する。河川生活期には,微小なプランクトン,水生昆虫,小型の魚などを,海洋生活期には,小型の魚,甲殻類,軟体動物などを摂餌する。大きなもので50~60cmに成長する。
成魚は,日本海,北太平洋水域一帯に広く生息する。海洋生活期には,水深15m以浅を遊泳しており,1日に移動する距離は,標識放流の結果から18~30kmと推定されている。一本釣り,はえなわ,地引網,角網,刺網などで漁獲されるが,サケに比べて数は少ない。
サクラマスは,マス類の中ではもっとも美味とされる。時期によっては,サケ類をもしのぐといわれる。海から川へ産卵に遡上を始める初夏のころが最上とされる。塩焼き,ムニエル,かす漬,薫製などにされる。関西では,新鮮なものを刺身にするほど,生のほうが美味である。すしの材料としても昔からよく使われ,富山県,神通川産のマスずしが有名である。なお,シューベルトの《鱒》はブラウントラウトである。
→サケ
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
マス
ます / 鱒
硬骨魚綱サケ目サケ科の魚類のうち、「マス」あるいは「~マス」という名のついた種類の俗称。市場などでは、北太平洋で多産するカラフトマス(別名セッパリマス)の塩漬けしたものをマスとよぶことが多いが、これは日本産のマス(サクラマス)と区別して名づけたものである。実際には両種ともマスとよぶ地方があるが、サクラマスはホンマスまたはママスとよばれることが多く、カラフトマスとは肉質が異なるので実質的にも区別される。また、サクラマスの河川型がヤマメとよばれる魚である。ほかにシロザケ(サケ)をオオメマスとよぶ地方もあるほか、ベニザケの別名にベニマスがあり、この魚の河川型がヒメマスとよばれる魚である。
サケ・マス類(鮭鱒(けいそん)類)ということばからは、マスとよばれるものはサケ科の一部という印象を受けるが、実際にはサケとよばれるものは少ない。サクラマスは、シロザケ、マスノスケ、ベニザケ、カラフトマスなどと同じく、北太平洋とその周辺海域に特産のサケ属Oncorhynchusの仲間で、マスとよばれる魚類のもっとも日本的なものである。かつては、サクラマスの標準和名としてマスという名を与える傾向にあったが、実用的ではなく、日本魚類学会でも本種の標準和名をサクラマスとすることを提唱している。また、サクラマスが河川へ遡上(そじょう)したものをカワマスとよぶ地方があるが、ほかにカワマスとよばれることがあるものに、北アメリカから移入されたブラウントラウトbrown troutとブルックトラウトbrook troutがある。ブラウントラウトはニジマス属Salmo、ブルックトラウトはイワナ属Salvelinusに含まれる別種である。
なお、釣り人はニジマスをマスとよぶことがある。このように、マスという名称には、サケ科のサケ属、ニジマス属、イワナ属のある種が「~マス」の名で含まれている。サケ科のなかでもイトウ属(イトウ)はマスとはよばない。
[阿部宗明]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
マス(鱒)【マス】
分類上はサケ科のサクラマスのこと。しかし東京ではやや味の落ちるカラフトマスをマスと俗称し,サクラマスをホンマスと呼ぶなど,名称は混乱している。他にマスの名のつくサケ科の魚にはヒメマス,ニジマス,カワマス,マスノスケなどがある。一般にサケとマスは明確に区分できると思われがちだが,ベニザケの陸封型をヒメマスというように,両者のちがいは定かでない。マスを代表するサクラマスは,陸封型をヤマメと呼んで区別する。全長60cm,サケとよく似るが幽門垂,鰓耙(さいは)の数が少ない。太平洋側の利根川以北,日本海側および熊本県などに分布。孵化(ふか)後1〜2年半で海に下り,約1〜2年を海で過ごして晩春〜初夏,産卵のため川をさかのぼる。定置網,刺網などで漁獲され,塩蔵するほか,塩焼き,ムニエル,刺身などで賞味する。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
マス
ます
アイヌ語に由来すると思われる地名。コタン名・場所名として記録されている。当地一帯は近代に入って蘭越村に包含された。仮名表記は「ます」(寛政蝦夷乱取調日記・東蝦夷地場所大概書)、「マス」(「蝦夷草紙別録」「西蝦夷地日記」「東蝦夷地道中記」「東蝦夷地場所大概書」「松前地並東蝦夷地明細記」など)と記される。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のマスの言及
【サル(猿)】より
…縄文時代から食用にされ,貝塚から骨が出るほか,古くから人に飼養されて愛玩用ともされ,銅鐸(どうたく)の絵画や埴輪(はにわ)の像の中にも猿をかたどったものがある。古くはマシ,マスなどと呼び,現代でも青森県,岩手県北部,秋田県鹿角郡,山形県庄内地方,和歌山県日高郡などの方言となって残り,一部では[忌詞](いみことば)として用いられる。またエテという名称も忌詞として用いられるが,猿が巧みに物をつかむところから得手と称したといわれる。…
【ハタ(羽太)】より
…日本近海からは60種以上が知られていて,このうち典型的なハタ類であるマハタ属は40種近くにのぼる。ハタ類の一般的名称として,関西を中心に西日本でマスまたはアラと呼ぶ地方が多い。また,英名としてsea bassまたはgrouperが一般的である。…
【水産物貿易】より
…所得増加を背景にした水産物需要の増加は,日本での漁獲高が少ないエビ,カニ,魚卵,マグロ等にも向かいはじめ最大の水産物輸入国であったアメリカを78年に追いぬいた。輸入品目としては,冷凍エビをトップ(輸入額の20%強)に近年伸びてきたマグロ(10%),サケ・マス(6%),イカ・タコ(6%)などとなっている(いずれも1995)。エビ,魚卵,タコ,カニ等は国産ものよりも輸入ものに依存する割合が高く,エビとマグロでは日本はアメリカとの2ヵ国で世界貿易の大半を占める。…
※「マス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」