改訂新版 世界大百科事典 「疑問仮名遣い」の意味・わかりやすい解説
疑問仮名遣い (ぎもんかなづかい)
仮名遣いに幾とおりもの書き方があり,そのどれを正しいとするか,根拠の明らかでない語のかなづかいをいう。表音主義のかなづかいでも,規定条文の解釈が人によって違い,適用が区々になることがある。たとえば〈現代かなづかい〉の場合の〈もとづく〉と〈もとずく〉,これも一種の疑問仮名遣いといえよう。契沖流の歴史的仮名遣いでは,その標準とする10世紀以前の文献に証例を求めえない語について,疑問が生ずる。国語調査委員会の《疑問仮名遣》は,前編(1912)は諸学者の説を収集,後編(1915)は語ごとに平安から室町まで各時代の文献での実例をあげ,傍証をとり,語源を論じて編者(本居清造)の見解を示したもので,歴史主義として妥当とすべき説である。たとえば〈用〉は〈もちひ〉を捨て〈もちゐ〉をとるなど。ただし公用文や教科書では,その後も〈もちひ〉のままであった。
執筆者:林 大
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報