日本大百科全書(ニッポニカ) 「相撲人形」の意味・わかりやすい解説
相撲人形
すもうにんぎょう
力士を人形化した玩具(がんぐ)。人形に相撲をさせるという、動きを主眼にしたものが多い。江戸時代相撲が興行化されて大衆の娯楽となり、その人気につれて、力士を人形に仕立てた玩具が登場した。
板製のものでは、1773年(安永2)刊の玩具絵本『江都二色(えどにしき)』(北尾重政(しげまさ)画)に、板角力(すもう)が紹介されている。薄板を切り抜いてつくった力士を向き合わせ、両足はそれぞれ胴に取り付けてある。双方の肩部と肩部に細長い板を渡し、これを互いの両腕とみなし、その板の中央に貫かれた棒を持って左右に動かすと、土俵上で両力士が取り組み合うように動く。この形式は長く流行し、明治中期ごろまで露店などでも売られた。現在は熊本県八代(やつしろ)市日奈久(ひなぐ)温泉土産(みやげ)の郷土玩具「板相撲」などに名残(なごり)をとどめている。紙製では、力士の姿を描いた絵を切り抜いて立て、それに息を吹き当てて倒し、勝負を争うものが江戸時代から流行し、明治以後も小物玩具として子供の遊び道具となった。練り物では、明治中期、相撲人形の底に毛を植えたものを立て、拳(こぶし)で台をたたいて動かし、勝負を争うものが現れた。またセルロイド製の人形をゴム管の操作によって踊らせ、取り組ませるものもある。
[斎藤良輔]