日本大百科全書(ニッポニカ) 「県令須知」の意味・わかりやすい解説
県令須知
けんれいすうち
18世紀中ごろに成立の地方書(じかたしょ)。著者は谷本教(たにもとのり)(1689―1752)。本教は近江(おうみ)国(滋賀県)の生まれで、通称は猶右衛門(ゆうえもん)、号は南湖子(なんこし)。画家谷文晁(たにぶんちょう)の祖父。小さいころから民事に通達していたが、大津代官の手代(てだい)として治績をあげ、1744年(延享1)には新規御直抱(おじきかかえ)となって江戸に召還された。また、49年(寛延2)には御普請(ごふしん)役として幕府勘定所詰となった。このような経験をもとに、郡代、代官らの農民支配上の心得に資するため各地に残存する覚書類を分類、抜粋して著したのが本書である。4巻よりなり、検地、村里、検見(けみ)、水利、種芸の5編が収められるが、記述は具体性に富み、有用な手引書となっている。『日本経済大典』第12巻、『日本経済叢書(そうしょ)』第8巻所収。
[飯島千秋]